2005年04月05日

美味しく戴く為に



何かで読んだ事がある。
『食事をしている光景を見るのは欲情する』とか。

食欲と性欲。
人間の三大欲の内のふたつ。

…あれ?もうひとつってなんだっけ?
まぁいいや。

そのふたつは絶妙に繋がっているらしい。

そもそも『口』という器官はとても敏感で、快楽を感じやすい。

食べ物を口に運び、租借し、味わう。
身を寄せあい、接吻をかわす。

味を感じ、喜びを覚える。
心地よい触れ合いに、悦びを覚える。

どちらも、『口』が関係する。

向かい合わせで、食事をすると、人は、まあその間柄にもよるらしいけれど、『その後』の事を考えて欲情するんだそうだ。
それは人間の本能だとかなんとか。

大昔。
生きる為に人間は狩猟をし、それを食した。
それは生命を維持する為。
夜になれば、獣の様に交わりを持った。
それは子孫繁栄の為。

食事の後に、性的な交わりを想像していまうのは、そうした遺伝子のプログラムによるところも大きいのかもしれない。

実際…今日私の部屋に彼女が泊まりに来ていて。
この後、後片付けをして、お風呂に入って…他愛無い時間を過ごした後、同じベッドで眠る。
…ただ『眠る』はずもない。
間接照明の明かりをひとつ、灯して…その淡い明かりの中にその肢体を少しずつ晒していく。
今はシワひとつないシーツ。
そこに、ふたりでシワを作っていく。
私の唇で、余すところなくその肢体に触れ…妖しく乱れていく彼女と共に。

それを、考えない訳はなし。

だけど、その行為を遺伝子のプログラムだけを理由にはしない。

気持が、最優先事項だ。
愛しいから、触れる。
それが最優先。

そう。
私は、彼女が…いとおしくてたまらない。







「…聖さま」
「ん?」

目の前の、彼の人が頬を染めながら俯く。

「そんなに…見ないで下さい」
「なんで」
「恥ずかしいです…」
「だって、祐巳ちゃんって本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しいだもん」

本当に、作りがいがある。
そう云って微笑むと、更に赤くなる。
そして上目遣いに云う。

「だって…聖さまの作る料理って美味しいんですもん…」

…そう…
私が作った料理を食す彼女。
そして、その彼女を見詰めて欲情している、私。

まるで、決まり事。
条件反射。

…それはまるで、『パブロフの犬』のよう。

私は、私の料理に舌づつみを打つ彼女に欲情する。



end…?





ひとこと
posted by 松島深冬 at 01:23| ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月04日

春眠、暁を…その2


レポートを殆ど徹夜で仕上げて提出、なんて事をしたせいか眠くて眠くてたまらない。

しかも、随分と暖かくなって桜の便りもテレビから届き出し、桜前線は北上している。

春。

春は、ちょっと苦手。
どうして…と問われても、上手く答えられないけれど。

理由は、色々ある。

栞と出会ったのも、春だった。
志摩子と出会ったのも…春だ。

どうやら私は春に縁があるらしい。

でも。
あの子と出会ったのは、秋だ。
学園祭の準備に大忙しの、あの頃。

けれど、あの子と出会ったのは秋だけど、あの子も春が似合う子かもしれない。
桜の花びらの舞い散る中、嬉しそうに桜を見上げる…その姿を思い浮かべる。

うん。
やっぱり似合う。

私の感傷も、吹き飛ばしてくれるような笑顔を、私に向けてくれるに違いない。


私は、雑木林にちょっと入った処の日当たりのいい木の幹に座り込んだ。
ほんの少し、睡眠を取らせて貰おう。

山百合会の仕事が終わるまで、まだ時間はある。
一眠りしたら、きっといい感じだろう。

あの子と、一緒に帰ると約束しているのだ。






「…さま」
「ん…?」

呼ばれた気がして、薄っすらと目を開いた。

「聖さま、何故こんな処で眠っていらっしゃるんです?」
「…おや、君は…」

電動ドリルちゃん。

思わず口から出そうになったけど、飲み込む。

「松平、瞳子ちゃん…だっけ。君こそどうして」
「何気無く目を向けたら、投げ出された足が見えたので、何事かと」

なかなかのチャレンジャーだ。
普通なら、見に来ないぞ?

「もし私じゃなく、死体か何かだったらどうするつもりだったの?」

だからこんな事を聞いてみる。

「マリア様が見守られているリリアンに、そんな事がある訳がないじゃないですか」
「成程」

ま、確かにこんな処に死体遺棄するチャレンジャーも居まい。
私はよっこらしょ、と立ち上がった。

丁度、あの子と同じくらいの身長。
いや、ちょっと低い?
髪を二つの分けているのも、ちょっと似てる。

まぁ、この子に場合は電動ドリルだけど。

「ちょっとね、睡眠を取らせて戴いてました。春眠暁を覚えず、というでしょ」
「はぁ…そうですね。しかし、惜しいですね。もう少し経てば、この桜の木にも花が咲いていたでしょうに」

おや。
まだ芽が膨らんでいるくらいのこの木が桜の木だとよく解ったものだ。
小さくて、花数もまだまだ少ないけれど、そこがまた綺麗だろうな、とその木を見る。
花開いた頃にまた来ようかな、なんて考える。
桜の花、舞い散る中…睡眠を取るのも風流かもしれない。

「暖かくなってきているからね。直ぐに花芽も膨らむでしょ。…ああそうだ。知ってる?」
「なんです?」

銀杏並木の方に目を向けていた電動ドリルちゃんが私を見る。

「元々は白いはずの桜の花が薄紅色なのは、木の下に死体が埋まっているからなんだって」

私がそう云うと、ちょうど暖かな風がふわりと頬を撫でて行った。
ドリルちゃんは一瞬、キュッ、と唇を結ぶと、次にフッと微笑んだ。

おや、なかなかいい笑顔だ。

「梶井基次郎ですね。しかし、ここの桜の木にはそれは当て嵌まりません。先にも云いましたが、マリア様が見守って居て下さるリリアンに、そんな事があるはずありませんから」
「成程」

それを聞いて、私も微笑んだ。

「…では、私はこれで。ごきげんよう」
「はい、ごきげんよう」

揺れるドリルにひらひらと手を振る。
さて、私もそろそろ行きますか。

腕時計に目をやると、いい感じの時間。
時計嫌いの私が、ようやく忘れる事無く腕時計をするようになった。
あの子との約束に、遅れる訳にはいかないからね。

「あ、聖さま」
「ん?」

ドリルちゃんが振り向いた。

「祐巳さまなら、今きっと図書館にいらっしゃいますよ」

行かれるのでしょう?とドリルちゃんが素っ気無く云って、今度こそ立ち去った。

ふむ。
図書館ね。

「了解」

私は大きく伸びをして、図書館へ向かうべく、歩き出した。



end.




ひとこと
posted by 松島深冬 at 01:15| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月03日

ため息

薔薇の館はいつでもここに来る者を見つめている。

老朽化は仕方が無い。
けれど、この扉も元は新しく綺麗だったはず。
この階段も、こんなに昇降にギシギシと音を立ててなどいなかったはず。

けれど、薔薇の館は、今も昔も『薔薇の館』なのだと思う。



これも歴史ってやつかね…いや、ちょっと違うか。

ビスケットの扉を開きながら溜息をついた。
一体、自分は何を考えているんだろう。
馬鹿馬鹿しい事この上ない。

もう少しで卒業だからか、センチメンタルになっているのだろうか。



「…入ってくるなり溜息なんてやめてよ」

自分と同じく薔薇の館の住人のひとりである蓉子が疲れた様に呟く。

いや、同じではないか…

前紅薔薇さまの妹になった時点から薔薇さまとしての自覚が有り余っていた蓉子と自分が同じである訳がない。

私は今でも、あの時『白薔薇のつぼみの妹』ではなく、お姉さまだから妹になったのだと思っている。
だから、今私についている『白薔薇さま』の称号は、ただのおまけだ。
そう、ただお姉さまにくっついていただけの、おまけ。
しかも嬉しくもない、迷惑なおまけ。
私にとってはそれだけだ。
まぁ後少しでこの『白薔薇さま』なんていう肩書とはオサラバ出来るけれど。


「……蓉子こそ私の顔を見るなりお説教はよしてよ」

私はまたも溜息をつく。

「…そう頻繁に溜息なんかついていたら、幸せが逃げて行くらしいわよ」

蓉子が発したとは思えないその言葉に、思わずフッと笑いを漏らした。

『幸せが逃げて行く』ねぇ…

「溜息と一緒に逃げて行く様な幸せなら、別に惜しくも何ともないし、いらないわね」

椅子を引き出すとドッカと腰を下ろしてその背にもたれた。

「…何?機嫌悪いわね」
「別に…なんでもない」

特に面白くない事があったわけでもない。

ただ、なんとなく…なんだろう。

私はこの部屋に入って三回目の溜息をついた。

強いて云うなら、『何も無い事がつまらない』のだろうか。
ふと、蓉子に目を向けると何やら一生懸命にペンを動かしている。

「…何やってるの?選挙も終わって実質代替わりしたってのに」
「え?ああ…ちょっとした後始末よ」
「…損な性分だよね…蓉子って」
「放っておいて」

そう云っていると耳にキシキシという階段を上る音が聞こえてきて、ギッという音を立てて扉の所に止まった。

扉が開かれ、姿を見せたのは、案の定祐巳ちゃんで。

「あ…っ!紅薔薇さま、白薔薇さま…!」

慌てたように「ごきげんよう」と頭を下げてくる。

「どうしたの?祐巳ちゃん、今日は会議は中止よ?」
「へ?あ、そ、そうなんですか!?」
「え?そうなの?」

代替わりしたのだから会議に出席しなくてもよいのだけど、気が向いたから来たというのに。

「…聖…貴方もなの…。祥子は家の御用、由乃ちゃんは定期検診、志摩子は委員会。だから後日改めてという事になったと祥子から聞いたんだけど…祐巳ちゃんにはうまく伝わらなかったのね」

指折り数えながら云う蓉子に祐巳ちゃんは、がっくりと肩を落とす。

「志摩子さんの委員会は聞いていたんですけど、そこまでは…」
「ま、いいじゃないの。誰もいない所に来たんじゃなくて良かったじゃない」

ねぇ?と私は蓉子を見る。
それに蓉子も頷いた。

「そうね…私達がいなかったら祐巳ちゃん、多分ひとりで待っていただろうし」

お茶を用意しながら笑う私に蓉子も祐巳ちゃんに笑い掛ける。

「はぁ…そうかもしれませんが…って、白薔薇さま!私がやりますっ」

ハッとして慌てた様に祐巳ちゃんが私の傍に来る。

「いいのいいの。たまには私がいれてあげよう。蓉子、ダージリンでいい?」
「かまわないわ。そこは任せて、こちらにいらっしゃい祐巳ちゃん」
「は、はぁ紅薔薇さま…すみません白薔薇さま、お願いします」

申し訳なさそうに云う祐巳ちゃんに、何故だろう、頬が緩む。
見れば蓉子もニコニコしている。
祐巳ちゃんだけが妙に緊張した面持ち。

何故だか、笑える。


「嫌ね、聖」
「何が?」
「祐巳ちゃんが来てくれたからって、そんなに嬉しそうにしちゃって」

確かに、さっきまでのクサクサした気持ちが、今は無くなっていた。
溜息も止まっている。

あれれ。

私はダージリンの良い香りに包まれながら、ふっと微笑む。

そっか…
祐巳ちゃんか。

ここ数日、祐巳ちゃんと顔を会わす機会が無かった。

つまり、そういう事。
祐巳ちゃんに会えない日数が、私に溜息を増産させていたのだろうと気付いた。

でも今は、その蓉子の言葉に素直には何故か頷けない。
何故かは、解らないけれど。
だから私は茶化すように云う。
…昔の私なら、鼻で笑って無視する所かも…なんて思いながら。

「そういう蓉子だって、久々に孫に会えて嬉しいおばあちゃんみたいだよ」
「あら、だって嬉しいもの」

…にっこり笑って云うと蓉子は爆弾を落としてくれる。

「素直に認めなさいよ。今の貴方の顔は、まるで久々に恋人に会ったみたいな顔よ」
「ロ、紅薔薇さま!?」

祐巳ちゃんが驚いたような声をあげる。

私は…どんな顔をしているんだろう。
蓉子が驚いた顔をしている。

自分で話を振っておいて、何でそんな顔してるのよ。。

私はティーカップを蓉子の前に置き、そして祐巳ちゃんの前にも置く。

そして。

「有難うござ…ぎゃっ!」
「そりゃ愛しい祐巳ちゃんに会えて嬉しいんだもーん。祐巳ちゃーんラーブ」
「白薔薇さまっお戯れはおやめ下さいーっ」

祥子みたいな事を云う祐巳ちゃんをギュッと背後から抱きしめながら、苦く笑う。



会えて嬉しい。
溜息がとまるくらいに嬉しい。

だけど…
この気持ちは、内緒。
もしかしたら、蓉子にはいつか…いや、今も薄々感づいているかもしれないけれど。
でも、祐巳ちゃんにだけは、内緒。


私は、多分きっと、君に惹かれてる。

そう…多分、きっと。





end…?





ひとこと
posted by 松島深冬 at 01:15| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月02日

駆け引きってヤツ

世の中には ハッピーや
ラッキーが
いっぱいあるよね
くちづけたい 嬉しくて
ほほ 頬ずりしたくなるでしょ







「な、なんですか?聖さま?」

じっ、と見ていると。
いつでも祐巳ちゃんはこんな風に聞いてくる。

「別に?」

そう云って微笑んでみせると「そうですか?」と今していた事に目を向ける。
それでもまだ見つめていると、だんだん落ち着かなくなってソワソワし出す。
私の目を…視線を気にして。
ああ、私の事、気になるんだね。
その内に、頬を赤く染め出して…

「〜っ!もうっ!何なんですか!」

ほら、怒った。

「そんな風に見つめられると落ち着かないじゃないですか!」
「どうして?私の事なんて気にしなければいいじゃない」
「…またそういう事を…そんなに見つめられていたら気になるに決まっているじゃないですか」
「そう?ほらほら、どうぞ私の事など気にせずに」

今の祐巳ちゃんは宿題中。
だけど、折角のお泊りだってのに、持ち込む事ないじゃない?
しかも英文法の単語穴埋め問題。
解らない所は私に聞けばいいのに、妙に意固地になって辞書を貸してくれと云って奮闘中だし。

…ま、確かにある程度は自分で悩まなきゃ、力にならないけどさ。

実は、私ちょっとすねてるんだな。
かまってくれないからってのと、頼ってもらえないのとで。

…それも時間の問題だと思うけど。

ほら。
祐巳ちゃんの表情が変わり出す。


『どうしたらいいかなぁ…』
『いや、まだまだ』
『でも…もう解らないし』
『それに、このまま見られ続けるのもなぁ』
『…仕方がない』

祐巳ちゃんが私の方を見る。
ちょっとバツが悪そうな、それでいてちょっと甘えたような表情で。

「…聖さま、あと1問…この問題だけなんですけど…」

ほらね?

私は内心のほくそ笑みを隠しながら『先生』の様に真面目な、それでいてちょっと微笑みながら祐巳ちゃんの右隣に座る。

「どれ?…ああ、これだね」

密着するように、左の肩に手を回して。
頬も触れんばかりに、近付いて。
そう、『息も掛かる距離』ってヤツをワザと作り出す。

今まで放っておかれた、報復だ。

「……だから、ここは……って、祐巳ちゃん?聞いてる?」

ぼんやりとしてしまっている祐巳ちゃんの顔を覗き込む。

「あ、あの…えっと…」

全く…可愛いよね。
何もしてない関係でも無いのに。
この位の接触にもこんな風に動揺して、照れてしまうんだから。

…って、私の心臓も、ちょっと加速してますけど。

「祐巳ちゃん?」
「す、すみません…」
「ドキドキしちゃう?」
「!」

悪戯っぽく云うと、祐巳ちゃんがバッと私から離れる。
あ、失敗失敗。

「もう!面白がってるんですね!」
「まさか。ひどいな、祐巳ちゃん」
「だって…」

ブツブツ云いながら下を向く。

ああ、もう駄目だ。
限界。

「祐巳ちゃん」
「え?」

だって、知ってるんだ。

祐巳ちゃんが、私の真面目な顔が好きだって。
こんな風に、教えられるのが、好きだって。
そんな風に思われてるのが嬉しくて。
だからついついそんなシチュエーションを私も作ってしまう。

今も。
ちょっと真剣な顔で、声で、祐巳ちゃんを呼ぶ。

「後で…ううん、明日。この問題、教えるから…だから」

そう云って、祐巳ちゃんに腕を伸ばした。

抱き締める私に応える様に頬をすり寄せてきながら…祐巳ちゃんがビックリ発言をしてくれた。


「…私、聖さまの…今みたいに、ちょっと困った様な切羽詰まってる様な声、好きです…」
「…どうして?」

思わず聞くと、背中にキュッと握り締める感触。

「私だけじゃないんだな…って思うから…」



やられた。

こんな風にされたら、理性も知性も吹っ飛んじゃう。



世の中にはハッピーも
ラッキーも全然なくても

あなたとなら




end…?






ひとこと。
posted by 松島深冬 at 11:17| ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月28日

春眠、暁を…

眠い。
もう、どうしようもなく、眠い。
もうお願いだから寝かせてって感じ。
寝かせてくれるなら何だってすると約束してもいい。
とにかく、眠い。




…前にも、こんな風に眠くてどうしようもなかった事があったっけ…
ぼんやりと、祐巳はそんな事を考えた。
確か、あれは学園祭が終わった後。
うまく睡眠が取れなくて、眠くて眠くてたまらなくなって、薔薇の館で眠ってしまったんだっけ。

なんだか、あの時みたい。

でも…今日は眠る訳にはいかない。
早く仕事を片付けなきゃ。

だって、この後聖さまと待ち合わせてるんだから。






「…さん」
「だ…だよ、起き……し、…らね…」


切れ切れに聞こえてくる会話。
あれ?
もしかして、寝ちゃった?
うわ…起きなきゃ。
でも、体が動かない。
由乃さん、いつもなら起こしてくれるのに、おかしいな。

「仕方……さま……してく…」

ああっ!
まさかこのまま寝かせてくれるつもり!?
ちょ…っ!
由乃さん!
志摩子さん!

誰か起こしてーっ!












「起こしてっ!」
「はい、おはよー」
「……へ?」

ガバッ!と顔をあげて、祐巳はここにいる筈のない人の声と、そして目に飛び込んできた、その綺麗な顔に驚いた。

「せ、聖さま!どうしてここに!」
「おや、随分な態度だなぁ。寝ちゃった祐巳ちゃんを待ってたのに」

酷いっ!と幾分芝居がかったシナを作る聖さまに咄嗟に「すみませんっ」と謝ってしまう。
そんな祐巳にクスクスと笑いながら聖さまは髪をかきあげた。

「相変わらずだなあ祐巳ちゃんは」
「で、聖さまは何故ここに…?」
「ん?どうしてだと思う?」

そう云いながら聖さまは、祐巳の顔を覗き込んでくる。
うう、ドキドキするんだってば、もう…
思わず顔が赤らんでしまう。

「意地悪しないで、教えて下さい」
「可愛い祐巳ちゃんの百面相に免じて教えようか。志摩子から携帯に電話がね」

へ?志摩子さん…が?

「祐巳さんが眠ってしまって、お姉さまを呼んでますって」
「え、ええっ!?」

うそ…っ
そんな恥ずかしい事しちゃった!?
そ、そういえば、ちらっと、夢を見てた気がする…聖さまの夢だったのかも…まさか寝言云ってないよね?
変な事、云ってないよね?

「…うそ」

ぽつり、と聖さまが呟いた。
見ると、ちょっと顔が赤い…?

「冗談だから、そんな真っ赤になってモジモジしながら百面相しないでいいから…」

苦笑する聖さまは、「あ、志摩子からの電話はホントだからね」と云った。

「さて、それじゃ帰ろうか。久々の薔薇の館も懐かしかったし、祐巳ちゃんの寝顔も拝めたし」
「…いつもお泊りしたら見てるじゃないですか」
「今晩も見せてもらうしね」

そう、今日はこれから聖さまのお部屋へ行くのだ。
お母さんの許可もバッチリ。

「んじゃ、行きまひょか」
「何処の人ですか」


聖さまは祐巳の手を取って歩き出す。
久しぶりに、薔薇の館にいる聖さまを見た。
なんだか、懐かしくて嬉しい。

でもちょっぴり気恥ずかしいのは何故なんだろう。



end.

posted by 松島深冬 at 13:09| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月19日

タイトル未定

噂にならない方がおかしいのかもしれない。
でも、何故かみんな口には出さない。
出さないのか、出せないのか。
それは解らないけれど、でも誰もその事については口にしない。
でも。
もし、誰かがひと事でもそれについて云ったなら…多分誰もが口々に云い出すのではないかと、私は思った。

レンズを磨いていた専用布をポケットにしまって、私はカメラを構える。

かしゃり、と軽い音を立ててシャッターが下りる。
素晴らしい被写体。
本当に、最高の被写体だ。

銀杏並木の中、笑いあいながら歩く姿をカメラにおさめて、私はクラグハウスに向かう。

紅薔薇のつぼみと、前白薔薇さまのワンシーンを二次元の印画紙に閉じ込める為に。





…ちょっとしたメモですね。
蔦子さんの危惧、でしょうか。
続きを書くかはちと未定。

posted by 松島深冬 at 09:18| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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