2005年06月03日

your songs










ぼんやりと聞くとはなしに聞いていたラジオから流れてきた歌に、ふと意識を囚われる事がある。
それは曲であったり、歌詞であったりは様々で。
でもどちらにしても、それはその時の自分の心情を表していたりするものが多いかもしれない。

そして…そんな曲や歌詞に出逢うと、自分の気持ちを露呈されてしまったような苦い気持ちになる事、然り。

何故、私が隠しているものを晒すのか、と。
どうして私の気持ちを、知らしめようとするのか、と。

まして…それを君と一緒に聞いていたら…私は内心、物凄い動揺に手が震えてしまうほどだったり。


「…聖さま?」

祐巳ちゃんを、いつものように背後から抱きしめて、ソファに座っていたとき。
BGM代わりのラジオから聞こえてきた歌に、私の動揺は案の定、祐巳ちゃんに伝わってしまうのだ。

歌に語られる、私の君への想い。
曲に表される、私の君への気持ち。

怖いほど


「聖さま…?どうしたんです?手が…震えて」
「…黙って」

ずるい私は、君の唇を塞ぐ事しか、考えられなくなってしまう。
その唇に触れる事しか。

君が、好き。

ねえ、お願い。
私の唇から、それを感じ取って。

私のずるさを。
そして私の想いを。

そして、怒ったように照れたように、笑って。





20050603


追記
posted by 松島深冬 at 03:47| ☀| Comment(4) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月31日

新しい朝の…

amnesia28、なんだか進まなくて、気分転換にちょっと書いてみました。
拍手にも『甘いのを』とありましたし…って、コレって甘いですか?
…甘くないよ…(遠い目)

明日こそ、amnesia28をupしたる。



では、どうぞ。SSS
posted by 松島深冬 at 02:57| ☀| Comment(6) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月28日

『愛しい』という事

昨日の予告をなんとか…ゆうべは寝落ちました…


これは『「いとおしい」という事』の祐巳ver.です。
なんだか妙に長くなりました…ミステリー…

では、どうぞ。


SSS
posted by 松島深冬 at 08:59| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月25日

『いとおしい』という事

何気に出来てしまった話?です。

うーん、捻りもなにも無い…


それでも良い方、どうぞ。


SSS
posted by 松島深冬 at 03:30| ☔| Comment(8) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月22日

その手の先ほどに



最近の祐巳は、思考の行き先が無意識に聖さまに向かう事が多い気がする。

何かを感じた時、『聖さまならどう思うんだろう』とか、つい考えてしまっていて。
そんな自分に気付いたりすると、妙に気恥ずかしかったり、時には嬉しくなってみたり。




そんな感じで祐巳はその時また、聖さまの事を考えていた。

多分、聖さまも読んだに違いない詩…読んだその時、聖さまはどう思ったんだろう…って。








「あの…帰宅途中に寄り道は…」
「寄り道ったって……お、あそこに熊が」
「え?何処です?熊の柵」
「熊の柵じゃなくてホラ、象の前に」
「ちょっ…山辺先生じゃないですか!もう、聖さまってば」

象の柵の前に山辺先生が、ぼんやり眺めて…いやいや、象を観察している。
本当に大きな動物を見るのが好きな人なんだな…としみじみ感じる。
だって、象を見る表情がとても穏やかだから。

そう、今祐巳と聖さまは動物園に来ていて。
いつものように帰り道、銀杏並木で聖さまに、今日の授業中に思った事を何気なく云ってみた。
そうしたら「んじゃ、ちょっと見に行こう」とそのまま有無を云わせず連行されて来てしまった。
寄り道する時は先生の立ち寄り許可を貰わなければいけないんだけど…でもまた学園内にわざわざ戻るのは…
それにまさか『動物園に寄り道します。許可下さい』なんてのは何か変だ。
そんな事を考えていたら、聖さまがクスクス笑い出した。
…相変わらず顔に出るんだな…と思わず赤くなると、ポンポンと背中を軽く叩かれた。

だけど…急に来ちゃったけど、なんだか、動物園なんて久しぶりだなと思って、ちょっと嬉しい。
でも制服のままってのはあまり…嬉しくないかも。

平日だからなんだろうか、人は少なめかもしれない。
動物たちも人の目を気にしなくていいからなのか、なんだかのんびりしているみたいに見えた。
…夜行性の動物は日中だから眠いだけかもしれないけど。



「あ、ほら、祐巳ちゃん」

クレープとか、食べたいかも…なんて思っていた時。
聖さまが指を指した先に、その動物はいた。

「どう思う?」
「…ぁ」

今日読んだ詩とは違う、ぼろぼろじゃない駝鳥たち。
長い首、小さな頭。

黒い羽は綺麗だ。

『動物園の四坪半のぬかるみの中では、足が大股過ぎるぢゃないか』

…その足元はぬかるんではいない。

「祐巳ちゃんが云っていた『ぼろぼろな駝鳥』とあの駝鳥たちは、どう違うと思う?」

なんだろう。
確かに、視覚的なイメージは全然違う。
文面では、物凄く窮屈というか…抑圧的な感じがした。
今祐巳が見ている駝鳥たちがいる所は、広いスペースの中で窮屈なイメージは無い…

でも…?

『駝鳥の眼は遠くばかりを見てゐるぢゃないか』

でも何故か…

「…って、聖さま…質問したのは私が先だったはずなんですけど」

はた、と気が付いて祐巳は聖さまのジャケットの裾をツン、と引いた。

祐巳が先に聞いたのに、何故祐巳が聞かれているんだろう。

「ははは、そうだったそうだった」

云いながら、聖さまの手が祐巳の頭を優しく撫でた。

「んー…、前にも何かの時に云った気がするんだけど、私、テレビの動物ものとか見ちゃうからさ…だからあの話…って、詩だっけ、あまり好きじゃない…いや、好きじゃないっていうか…私も同感だなって思ったんだな」

苦く笑いながら聖さまが祐巳の頭から頬に手を移動させる。

「同じ理由でこういう場所自体もあんまりね…でも、『人間』にとっては必要な場所かもしれないとは思うよ。で、祐巳ちゃんはどう思った?」

苦い笑みを浮かべたまま、聖さまが駝鳥たちに視線を向けた。

「…なんだか…あの文章に出てくるような窮屈で荒れた雰囲気は無いですけど……でも、駝鳥たちの印象はどちらも似ている気がします」

広い…広大な自然の中から連れてこられたんじゃなく、この日本で生まれた駝鳥もいるかもしれない。
でも、もし本能とか…そういうのがあるなら…もしかしたら『帰りたい』と思っているかもしれない。

あの、広い広い自然の中に。

『あの小さな素朴な顔が無辺大の夢で逆まいてゐるぢゃないか』

そう考えると、此処にいる動物たちは人間の我が儘で柵に閉じ込められているような気がしてきてしまった。
小さな頃は、普段見る事の出来ない動物に会える動物園は大好きだったけれど…
なんだか…

『瑠璃色の風が今にも吹いてくるのを待ちかまへてゐるぢゃないか』

なんだか…

「みんな、『帰りたい』って、思っているかもしれませんね…」

祐巳が沈んできてしまったからか、何故だか聖さまが「ごめん」と謝って、また頭をわしわしと撫でた。

「確かに本能として自然に帰りたい気持ちはあるかもしれない…だけど、良い事か悪い事かは解らないけど…今自然の中に戻されたら、きっと生きていけない…自分で餌を捕る事も、群れの中に入る事も出来ず、死んでしまうかもしれない」
「聖さま…」
「ま、ゴロンタをカラスから助けちゃって、ご飯やおやつをあげた私がこんな風に云うのは矛盾してるんだけどね」

行こうか、と聖さまが祐巳の手を取り歩き出す。

それから聖さまは、その話題には触れなかった。



でも、他の話をしていても、祐巳の頭からは聖さまと話した駝鳥の話が抜ける事は無くて。

何故か解らないけど…聖さまも窮屈な思いをしているんじゃないかな…なんて事を考えてしまった。

本当何故か解らないけれど…

そして、これは聖さまには聞く事が出来ないとも…思った。

どうしてそんな事を思ったかなんて、説明も出来ないし、それは祐巳にも解らない事だから。

『自然に帰りたい』

あの言葉は、聖さま自身の言葉なんじゃないだろうか…なんて、祐巳は漠然と思ったから。



握っていた聖さまの手を、キュッと握り返す。

「…祐巳ちゃん?」

どうしたの?と、聖さまが祐巳に笑い掛ける。

「…いいえ」

何でもないんです、と祐巳も聖さまに笑い掛けた。


お願いです、傍にいて下さい。
ずっと、ずっと。







参考/『ぼろぼろな駝鳥』高村光太郎

posted by 松島深冬 at 10:14| ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月06日

刻み込まれる時

…『許された距離』の裏のつもりだったんですけど…

違うじゃん。私(渇笑)


という訳で、チャレンジャーな貴方。
どうぞ。




SSS
posted by 松島深冬 at 03:36| ☁| Comment(11) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月04日

許された距離


久々に聖さまと蓉子さまの話。
…眠いです。
もうダメです…

なんか蓉子さま、イカンな…



チャレンジャーな方、お暇な方、どうぞ。





SSS
posted by 松島深冬 at 03:59| ☁| Comment(9) | TrackBack(1) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月30日

いつか、まみえる其の日まで

短いのを一本。
すいません…なかなかSSは長いの書けなくて。




SSS
posted by 松島深冬 at 03:25| ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月28日

ただ、それだけ

物凄く短いですが…
散文的ですな…面白みも何も無いです(苦笑)
だから隠してみました…
チャレンジャーやお暇な方、どうぞ。



SSS
posted by 松島深冬 at 03:12| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月26日

助手席マジック〜抱きしめたい・3〜

これで一応のお終いです、『抱きしめたい』。

なんだかホントに楽しくなってしまった三本です(笑)

こういうのもいいなー楽しいなー♪

では、ドウゾ。




SSS
posted by 松島深冬 at 01:33| ☁| Comment(8) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月25日

貴方は知らない 〜抱きしめたい・2〜

携帯からポチポチ打ちまして。
『抱きしめたい』の続きです。
もう一本、続きます。

なんかこういう何気無い話もいいですね…
うちの話は何処かシリアス(笑)


では、ドウゾ。


SSS
posted by 松島深冬 at 02:27| ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月23日

抱きしめたい

携帯からぽちぽち打ち込んでup。
一応『amnesia』その後、でしょうかね。
今晩こそはamnesia25を…という決意の表れと(笑)



では。どうぞ。
あ、amnesia終了後に読みたい、という方もいらっしゃるかと思いまして、隠してみましたが(笑)
別にamnesiaネタバレとかは無いと思いますけど。



SSS
posted by 松島深冬 at 09:05| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月20日

恋愛モード/聖さま3

ごきげんよう、皆様。貴方の松島深冬です。
如何お過ごしですか?
ラーインアーイズ今夜ーだけー君を盗み出したーいー
ばーいaccess。

何莫迦云っていやがる私(渇笑)

えーと、何故か長くなった『恋愛モード』
多分これで終わりです。
甘いのを書くぞ!とタイトルをコレにしたのに…気がつけば、何か違うものになってました…

これじゃいつもと同じじゃねぇか!
なーんて突っ込みはノンノン。
誰より私が一番解ってますから…いじめないで下さい…

今回はちょっぴりR指定かも。
嫌いな方はお気を付けあそばせ。

でもねー私そういう場面描写を事細かに書くのってちょっと…つまらないなぁ、なんて。

あからさまって色気無い気がするので…
チラリズムのがドキドキする…って、まだまだ修行足らないから色っぽくならないけど(泣)SSS
posted by 松島深冬 at 02:22| ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月19日

恋愛モード/聖さま2

眠いです…
もう寝ます…
続き、どうしましょうか…書かなきゃいけませんよね、コレじゃ(笑)


特に年齢指定も無いですが…内容が内容なのでちょっと隠してみました。

SSS
posted by 松島深冬 at 02:54| ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月16日

恋愛モード・聖さまver.




普段から、ちょっと体温高め。
俗に云う子供体温ってヤツ。
でも、今日はそれよりも、熱い。

そして、もう子供なんかじゃない…あの子が私を悩ませる。





M駅傍にあるバス停。
流石に駅だけあって、色んな沿線のバスがある。
その中には、リリアン沿線バスもあって、一日に何往復もしている。

今日。
ふわふわとした感じで歩く祐巳ちゃんをミルクホールで見掛けた。
たまたま用があって通り掛った時だから、声も掛ける事すら出来なかったけど…ずっと気に掛かっていて。
だから、私は祐巳ちゃんを間違いなく捕まえる事が出来る駅のバス停傍で待っていた。

本当ならマリア様の前やリリアン表門傍のバス停で待っていても良かったんだけど…
ちょっと思うところがあってM駅にした。


カメラちゃんから、ちょっとした話を聞いていたから……その話はまた別の話だけど。


まぁ駅なら、人を待つのも便利だし。

そんな事を考えていたら、大体いつもの時間位で祐巳ちゃんの姿が見えた。
案の定、ふわふわしているようだ。

……いや、さっきより酷い?

まるで、力が抜けるようにその場に倒れそうな祐巳ちゃんの傍に私は慌てて駆け寄った。


「祐巳ちゃん!」

寸での所で体を支えると、祐巳ちゃんが私の顔を不思議そうに見る。
その祐巳ちゃんの額に触れると私の手が冷たかったのか身を竦めた。
駄目だコリャ……熱が高いよ。

「祐巳ちゃん、うちに行こう。ね?」

そう云うと訳が解らないのか、それとも解っているのか区別の付き難い表情でコクリと頷く。
今が丁度熱のあがりのピークなんだろうか。
それとも、これからまだまだ上がるのだろうか…?

「どうする?歩け…ないよね。タクシー使おう」

私は支えていた祐巳ちゃんの体勢を立て直すようにしながら立たせる。
そして直ぐ傍のベンチに座らせてから数メートル先にあるタクシー乗り場へと急いだ。







……何とか部屋まで連れてきて、ソファに座らせると私は冷蔵庫から冷却シートとさっきマンション前の自販機で買ったスポーツドリンクを祐巳ちゃんに手渡す。

「……少し休んだら、おうちまで送って上げるから…」

そんな状況すら、祐巳ちゃんにはよく解っていないらしく、きょとん、としている。
思わず私は苦笑してしまう。

……全く、可愛いんだから。

「ね、祐巳ちゃん。朝はどんな感じだった?」
「朝……いつもより目覚めが悪かった気がしました…」
「寒気とかは」
「え?ええ…なんとなく背中が寒い感じはありましたけど…」
「今は?」
「ちょっと寒いです…」

やっぱり、もう朝から調子が良くなかったんだ…
よく帰るまで倒れたりしなかったもんだ。

それ以前に、どうして誰も気付いてやれなかったんだ?
由乃ちゃんやカメラちゃん、それに確かに築山三奈子の妹も同じクラスだったはず……あれ?違ったっけ?
いや、そんな事はどうでもいい。
とにかく誰か気付いてやれなかったんだろうか……それがちょっと悔やまれた。

私は、祐巳ちゃんの小さな背中を抱きしめた。

ごめんね、あの時、やっぱり声を掛けるんだったね…

祐巳ちゃんが、少し寄り掛かるように体を預けてくる。

「熱がある…きっと、風邪かなにかだと思うけど…」

私は抱く腕の力を少し強めた。

抱いている背中が、熱い。
体温計で熱を測った方がいいな。

そう思った時、祐巳ちゃんがくるりと振り返り私を見た。
目が熱のせいで潤んでいる。
そして、私の頬に唇を寄せてきた。

……え?

「……祐巳、ちゃん?」
「聖さま…好き」

どきん、と心臓が思わず跳ねた。

潤んだ瞳。
上気している頬。
熱のせいだって、解っているのに、妙にその表情は艶かしい。

思わず固まってしまった私の胸に頬を寄せて、背中には腕が回される。

「温めて、下さい……、もっと」


……ああ、まずいって…それ。

私は頭の中の何処かで、何かが切れそうな…キリキリという音を聞く。
でも、寸での所でまだ理性が勝っている。
当然だ。
祐巳ちゃんは風邪で熱があるんだから。
だから、寒気がするから、温めてくれって云ってるんだから。
おかしな方向に言葉の意味を掛け間違えてはイケナイ。

「……せい、さまぁ…」

甘えた声。
いつもはこんな声で私を呼ばない。

こんな声で私を呼ぶのは……抱き合っている時だ。
もちろん、こんな風ではなく、素肌を晒して快楽を追い掛けながら抱き合っている時。


まずい…って…


心臓が、早鐘のように鼓動を刻んでいる。


もしかして、私は試されているんだろうか?

…そうだ。
祐巳ちゃんを引き離して……うん、そうだよ、ベッドに寝かせてあげよう。
少なくとも、こんな風にしているよりは温かいだろう。

「ゆ…みちゃん…ベッドに移動しようか。その方が温まれる」

なんで声が掠れるんだ、私。
それにこんな云い方じゃ…まるで……

「……はい」

祐巳ちゃんが上気している頬を更に上気させて、まるでキスをねだる様に私を見上げて目を閉じた。


………そんな風にされて、応じずにいられるほど、私は人格者でも満たされてもいない。

私は、熱のせいで熱い祐巳ちゃんの唇にゆっくりと唇を重ねていった。

――そういえば、汗をかけば熱って下がるんだったっけ……?

なんて事を考えながら、祐巳ちゃんをベッドへと運ぶべく、立ち上がった。


20050416

posted by 松島深冬 at 08:20| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月15日

恋愛モード/祐巳




実は、予感があった。

ひとつ、背筋の悪寒。
ふたつ、妙な眠気。
みっつ、頭に鈍い痛み。
よっつ、手の冷え。


医者に云ってこれを云えば多分「ああ、風邪ですね」と云われるに違いない。








「祐巳ちゃん!」

何処かから声がした…と思った。
そして気付いたら、祐巳は聖さまの顔を間近に見ていた。
心配そうな、表情。

どうしたんだろうか、と思う。
そして、なんか…苦しいんだけど…祐巳は一体どうしたんだろう。
額に冷たいものが触って、思わず身を竦める。

「祐巳ちゃん、うちに行こう。ね?」

聖さまが真剣な顔で云う。
不謹慎にも、それが『珍しい』とか思ってしまう。
だって聖さまはいつでも笑っているような人だから。

なんだか解らない迫力に、祐巳は頷く。
断る理由もないし。

「どうする?歩け…ないよね。タクシー使おう」

へ?
なんでタクシー…?

そして、聖さまの、祐巳の背中に回っていた腕に体勢を整えられて、そこで初めて祐巳が倒れそうになっていた事が、祐巳自身に解った。





「……少し休んだら、おうちまで送って上げるから…」

冷えピタをおでこに貼られて、手にはスポーツドリンク。

祐巳はぼんやりと聖さまを見る。
どうにも、状況が把握出来てない気がする…自分の事だってのに。

そんな祐巳に、聖さまも苦く笑うばかりだ。

「朝はどんな感じだった?」
「朝…いつもより目覚めが悪かった気がしました…」

そう。
何故かお布団から出たくなくて。
でも何とか体を叱咤して起きたんだっけ。

「寒気とかは」
「え?ええ…なんとなく背中が寒い感じはありましたけど…」
「今は?」
「ちょっと寒いです…」

そういうと、聖さまの腕が祐巳に伸びてきた。
背中から、抱きしめてきて…温かい。

それが嬉しくて、ちょっぴり聖さまに寄り掛かる。

「熱がある…きっと、風邪かなにかだと思うけど…」

云いながら、祐巳に応えてしっかりと祐巳を抱きしめてくれた。
嬉しい。
聖さまがいつもより、ずっとずっと優しい。
ううん、何だかそれじゃいつもは優しくないみたい…そうじゃないくて、いつも優しいけど、更にって事。

でも…こんな風にされていたら…思い切り甘えてしまいたくなってしまう。
祐巳はくるりと後ろを振り返り、聖さまの頬にキスをした。

「……祐巳、ちゃん?」
「聖さま…好き」

そう云いながら、聖さまに向き直って背中に腕を回した。

「温めて、下さい…もっと」





20050415

posted by 松島深冬 at 07:03| ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月13日

さくら、さくら




「知ってる?『さくらさくら』って、いろんなバージョンの歌詞があるんだって」


聖さまが指をペロリと舐めて云った。
ちょっとだけ、その仕草に祐巳は頬が熱くなるのを感じて少し俯いて桜餅を口に運んだ。

…だって、なんか妙に色っぽいって云うか、艶かしいって云うか…

当の聖さまは「ちょっとこの桜の葉、しょっぱいなぁ。でもこのしょっぱさがまたオツですな」なんて云ってる。

「…いろんなバージョンって…?」
「うん、この間ラジオで云ってたんだけどね、江戸時代の頃のと、明治の頃のと、昭和初期に作られたのとが有るらしいよ。ポピュラーな『さくらさくら』は元々箏曲だったものに歌詞をつけたんだったっけ…?うーん、失念」

熱い緑茶をすすりながら笑う。

へぇ…それは初耳かも。
箏曲ってのは何となく解る気がするけど…
でもそんなに歌詞が色々あったとは。
祐巳はひとつしか知らない。

「で、他の『さくらさくら』って、どんな歌詞なんです?」
「一度聞いただけだもん、覚えられなかった」

苦笑する聖さまに「そうですよね」と祐巳は最後のひと口を口に入れた。
一度聞いて、それを全部覚えていたら…ちょっと凄すぎる。

指についた餡を舐めると、桜の葉の塩漬けの味。
あ、確かにちょっとしょっぱめ。
そういえば、この桜餅だって地方によって色々らしい。
今祐巳と聖さまが食べたのは、聖さまが購入してきた道明寺粉で作ったおはぎのピンクバージョン…ってその例えはどうだろうって感じだけど。
柏餅のピンクバージョンの桜餅もあって…って、この例えもなんだかな。

『さくらkさくら』も、もしかしたら土地土地で違うのかも…

なんて、考えてたら、聖さまが祐巳を見てる。

「……また百面相してましたか」
「うん。あとね…」

そう云いながら、聖さまが祐巳に顔を寄せた。

「指を舐める仕草って、なんか、そそるね」
「…は?」

くい、と顎を指で持ち上げられて、ペロッと唇を舐められた。

「…うん、ちょっとしょっぱめ」

唇についていた桜餅の葉の塩分を舐めとられた。
思わず、さっきの指を舐める聖さまを思い出す。
そして、自分も無意識の同じ行動をしていた事に気付いた。

俯きたくても、聖さまの指がまだ顎を支えていて、出来ない。
どうしようもなくなって、祐巳は聖さまを上目遣いで見る事しか出来なくて。
聖さまは、そんな祐巳にいつもより、ほんの少し艶かしい笑みを浮かべる。

そして…ほんのちょっぴり、しょっぱいけれど甘い、聖さまの唇が…祐巳の唇に重なってきた。




end…?



ひとこと
posted by 松島深冬 at 03:45| ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月11日

微睡み



『微睡む』って言葉がよく似合う。

とろとろと、眠りに落ちそう。
その様子が、なんとも愛らしい。

そんな時、声を掛けるのも何だか可哀想になる。

横になりなよ、とか、寄り掛かっていいよ、とか。
云いたいけれど、それを云ったら起こしてしまう。

だから、私はソファの祐巳ちゃんの隣にそっと近寄って、その体を寄り掛からせるようにする。

私の腕に、温かな重み。
頬をくすぐる髪。
ふわりと漂う、甘い香り。

そして、その内に耳に聞こえてくる規則正しい呼吸…
完全な、眠りの世界。

私は優しく眠る祐巳ちゃんを見詰める。

頬に影を作っている睫毛、結構長い。
私もよく色が白いと云われるけれど、祐巳ちゃんも白い方だよね。
うっすらと開かれている唇の形も可愛らしい。
触れると、暖かくて柔らかくて…甘いんだ。
それを知ってるのは私だけだけど。

不安定になってきているから、いつ滑り落ちるか解らない膝の上の雑誌を、そっと取ってテーブルへ。
そしてBGM代わりに流れていたTVのスイッチを切った。

静寂が、広がる。
聞こえるのは、隣で私に体を預ける祐巳ちゃんのささやかな寝息のみ。


……これって、凄く至福の時間かもしれない。

私はそう気付いて微笑む。


ただ、何をする訳でもなく。
いとおしい子が私に安心して体を預けている。
優しい、甘やかな…ゆっくりと流れていく時間。

窓の外は程よく天気。
青い空に、一筋の飛行機雲。


私はもう一度、心の中で呟いた。


これって、至福の時間かもしれないね。






  †





ふ、と目が覚めた。

そして、自分が聖さまに寄り掛かって眠っていた事を知って…それから、今の自分の状況に顔が熱くなるのを抑えられなかった。

聖さまの、綺麗な寝顔が直ぐ横にあった。
長い睫毛が際立って見える。

正直に、綺麗だって思う顔。

聖さまは腕組みをして、ちょっぴり祐巳にもたれ掛かるようにして眠っていた。
元はきっと、祐巳が眠って聖さまに寄り掛かったんだろうけれど…

なんとなく、体に感じる重みが気恥ずかしくて…それでいて、ちょっぴり嬉しい。

聖さまは、とても人当たりよく見えるけれど…本当はちょっと違う。
そして、何より人に触られるのが嫌いなのだという。
それは以前直接聖さまの口から聞いた。

髪先に触れられるのも嫌なのだと。

でも…
気を許した人間には結構過剰に接触してくる。

『祐巳ちゃんは、最初から平気だった』
そう云って聖さまが笑っていた。
確かに…祐巳は、何故か知り合った頃から抱きつかれたりしていたけれど…それも本当は凄く稀な事だったらしい。


それを、祐巳は素直に嬉しいと思う。
そんなに人に触られたり触れるのが苦手なら、こんな風に体を預けて眠るなんて出来ないだろうから。
祐巳は、聖さまに気を許してもらえる数少ないひとりだって事だから。


こんな風に、眠ってもらえるなんて、幸せだな。

心安らかに体を預けてくれる聖さまに、そんな事を思って微笑んだ。


祐巳はもう少し、この幸せな時間に身を浸していようと思って目を閉じた。




聖さまが、目を覚ました時…微笑んでくれますように。





end…?





ひとこと
posted by 松島深冬 at 03:19| ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月09日

大切な重み


期待しても叶えられる事がなく、痛いだけならイラナイ。
それなら欲しがらない。

それに、もうあんなに誰かを好きになるなんて事は、もうきっと無いに違いない。



ずっとそう思っていたのに……たった一年。
いや、一年経たないうちに君に出会うなんて。









「聖さま、起きて下さい。朝ですよ。朝食、冷めますよ」

最高の目覚まし。
けたたましい目覚まし時計の音なんかじゃない。
柔らかく、優しい声色。
君の声が私を覚醒へと導く。

「起きて、聖さま。卵にチーズ入れたんです。固まってしまうと美味しくなくなってしまいます」
「んー…今起きる」

大学に入学した時に切った髪は、もう大分伸びてきている。
前髪をかきあげると、祐巳ちゃんが微笑んで目を細めた。

「何?どうかした?」
「いえ…髪が伸びたなって」

ちょうど考えていた事と同じ事を云われて少し驚く。

「私が山百合会に出入りするようになった頃みたいですね」
「……そうだね」

伸びるに任せている髪は、今では肩に付くのではないか…という程になっている。

「あ、そうだ。コーヒーにしますか?それとも他のものに?」
「…ん…チーズオムレツだよね?オレンジジュースにしようかな」
「はーい」

じゃあ用意してますから、と祐巳ちゃんが私から離れようとする。
思わず、その手を取って引き止めた。

「聖さま?」
「おはようのチューは?」

そう云うと、「へ?」と祐巳ちゃんは声を洩らして、次の瞬間真っ赤になる。

「せ、席についてからです!」

するりと私の手から逃れながら云うと、祐巳ちゃんはパタパタとキッチンへと行ってしまった。

…後に残された私は、ベッドから丁度見える位置にある鏡に映る自分の姿を見ていた。

其処に映っている、私。
あと少し髪が伸びれば、あの時の私のようだった。


あの冬の日…17歳になったばかりの頃に、長かった髪をザックリと切り落とした時の私。
栞の髪を覚えている長い髪を、切った頃の私。

鈍い痛みが胸に走った。

困ったものだ。
心臓は、まだあの時に反応する。
心は、まだあの時の身を切られる程の痛みを覚えている。

そんな簡単に消えるものじゃないけれど。
でも。
心囚われている、大切な人がいるというのに、頑固なものだとも思う。



「……祐巳ちゃん…?」

キッチンへ行っていると思っていた祐巳ちゃんが、いつの間にか其処に立っていた。
そして私の肩に手を置いて体を屈めると、そっと、触れるだけの接吻。

「おはようの、キス…です」

頬をほんのりと染めて、呟く。
染まった頬に見え隠れしているその表情は、ほんの少しだけ心配気。

おいおい、ちょっと待って。
いや、祐巳ちゃんじゃなくて、私が。
ちょっと待て私!
そんなに不安そうな顔していたんだろうか?
祐巳ちゃんが心配して戻ってくる程に、死にそうな顔でもしていたんだろうか?

それとも、物欲しそうな顔でもしていたんだろうか…?

「…どうしてって、聞いていい?」
「え?」
「どうして、キスしてくれたの?」

私が聞くと、祐巳ちゃんは不思議そうに、きょとん、とした顔をする。
その表情に、思わず『聞かなきゃよかった』なんて思う。

「いけませんか…?」
「いや、いけない事はないけれど…むしろ嬉しいし」

そう、素直に嬉しい。
今だに記憶に反応する体と心を、あっさりと引き戻せる祐巳ちゃんが。
この子が大切で、いとおしいと…温かな気持にさせてくれながらも、ちょっぴり落ち着かなくさせるこの子が本当に大切だと思う。

「…それなら、いいじゃないですか」

そう云うと、祐巳ちゃんが今だベッドの上の私にしな垂れかかってくる。

「…祐巳、ちゃん?」
「はい?」

背中に回される腕に、心臓が騒ぎ出す。
胸に頬を寄せている祐巳ちゃんに、心臓の速さを完全に知られているだろう。
でも、祐巳ちゃんは何も云わない。
まるで泣いている子が心音を聞く為にそうしているかのよう。

…これで決定だ。
祐巳ちゃんは、昔に囚われそうなった私に気付いたに違いない。

不安にさせてしまったんだろうか。
疑心暗鬼に囚われているのだろうか。

直接には知らない『栞』の幻影が、祐巳ちゃんを捕らえたのだろうか。

云い訳するのもおかしい。
何を云えっていうのか。
でも…確実に私が祐巳ちゃんを不安にさせた。
どうしたら歪曲する事なく、今の私自身の気持を伝えられるだろう。

そんな事を、私が考えていると。


「私…聖さまの心臓の音って好きです」
「え?」

胸に頬を寄せて云う祐巳ちゃんを見下ろす。
祐巳ちゃんは、顔を上げて私を見ると、柔らかく微笑んだ。


「…だって、私がこうすると、ドキドキしてくれるから…」




end…?





ひとこと
posted by 松島深冬 at 03:14| ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月06日

病は気から?



「どうしたの、祐巳さん」

蔦子さんがひょい、と顔を覗き込んできた。
ちょっと、心配そうな表情だ。

「んー…なんかお腹痛いみたい…」

そう祐巳が云うと、「みたいって…そんな他人事みたいに」と呆れたように云う。
なんだか、チクチクと痛む。
いや、シクシク、かな。

とにかく、ちょっと痛い感じ。

「医務室、行く?」
「んー…そこまでは痛くないんだけど」
「でも、祐巳さん…今祐巳さんが押さえてる処、胃だよ。胃痛なんじゃない?」
「胃痛…」

胃が痛くなるような事。
…聖さまと、喧嘩した事が原因だろうか。

「あと一時限だけだし…少し休めせて貰ったら?どうせ放課後も山百合会で大忙しでしょ?」
「…うん」


そうしようかな、という祐巳に蔦子さんがカメラ片手に付き添ってくれた。

…なんでも、医務室のベッドで寝てる祐巳を取るんだそうだ。
思わず、祐巳はがっくりと肩を落としてしまった。






栄子先生に症状を告げて、ベッドを借りる。

「やっぱり、山百合会の仕事忙しいの?」
「はぁ…まぁ…」
「根をつめては駄目よー、体は資本だからね」

そう云うと、栄子先生は教務員室へ向かってしまった。



先生が居なくなり、祐巳がベッドに入った瞬間。

ぱしゃり、と蔦子さんが写真を撮る、
…あれ?
いつものカメラじゃなく、蔦子さんが手に持っているは、デジタルカメラだ。

そのデジカメで、祐巳を撮っていた。












あれ。
完全に眠っていたんだな、と祐巳は白いカーテンを見ながら考えていた。



「あ、起きた」

傍らの椅子に座っている聖さまに思わず素で「何故いるんですか」と真顔で云っていた。

「そりゃ勿論カメラちゃんのおかげで」

まさか。
聖さまに見せるつもりでデジカメにしたんだろうか…
デジカメは撮ったその場で知れるからなんだろうか。

「カメラちゃんがね、ベッドに居る祐巳ちゃんを見せてくれたのよ。もうそれ見ていても立ってもいられなくて、飛んできましたね、私は」
「…そうですか」

何故だか、胃痛が治まった。
うん、ほんとに今、急に。

…これこそ、病は気から、って処なんだろうか…


でも、誤魔化されませんから。

だって祐巳と聖さまは喧嘩していたんだから。
こんな風に来てくれたからって…

でも、祐巳の顔はほころびっ放しだった。




ひこと
posted by 松島深冬 at 02:57| ☔| Comment(6) | TrackBack(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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