2007年03月16日

キモチモンダイ・2(前)

前編ってことで(苦笑)

いや、久し振りに瞳子ちゃんを…なんて思って書き出したんですが…原作読んでない人にはサッパリな話です、スイマセン。

携帯からの書き込みなので、ちょっとゆっくりペースで書きます。

PCじゃないんでマリみてSSリンクに登録に行けないんで、この話終えたらPCから登録に行こうかな。

あ、誰か登録してくれませんかね?(おいおい)


では、『キモチモンダイ・2』前編を。





理屈じゃないからね

そう云って聖さまは微笑んだ。






……何故だろう。
祐巳は、あの梅雨のころを思い出していた。

「祐巳ちゃん」

むせ返るような…まとわりつく湿度の高い空気とは違う、乾いた冷たい空気……何よりまわりの木々は寒そうに葉を落としていて、若葉が繁っていたあの時とは似ても似つかない風景なのに。

「聖、さま……」

声を掛けられたのは祐巳で……なにもかも、あの時とは似ても似つかないのに。
それなのに、祐巳は一瞬あの時に戻ったような錯覚を覚えながら微笑む聖さまの顔を見ていた





「はい、どーぞ」
「っ!」

冷えていた手に温かい缶をあてられて、びっくりして声にならない声をあげてしまう。
祐巳はその手にあてられたコーンポタージュの缶を両手で受け取って、聖さまを見上げた。

「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。ミルクティーと迷ったんだけどね」

ホントならご飯でも誘いたいところなんだけど、と笑う聖さまに、祐巳は「ありがとうございます」と笑った。
ちょっと駅ビルの本屋へ…くらいとは違って制服のまま寄り道は悪目立ちしてしまうし、基本的にリリアンは寄り道禁止だから。

聖さまは相変わらずブラックの缶コーヒー。
それを手に、ベンチに座る祐巳の隣に腰を下ろした。

…途端、ふわ…っと暖かさを感じる。

「ん?」

どうしたの?と云うように小首を傾げて祐巳を見る。

聖さまって体温が高いんだろうか?
いや、よく祐巳を羽交い締めにして暖をとっていた人だったからそれは…

まさか熱が!?

不思議そうに祐巳を見ながらリングプルを引こうとしていた聖さまの手をガッシと掴んだ。

「へ?」

聖さまの手は冷たくはないけれど、極端に熱い訳でもない。
手を離すと今度は少し長めの前髪を掻きあげるようにしておでこに手を当てた。

「ちょ、ちょっと祐巳ちゃん?」

いきなりな祐巳の行動に驚いたように声をあげる。
うん、熱はないみたい。
じゃあコート…?
もしやコートの下にはカイロとか…?
パタパタと聖さまのコートを触る。

…やっぱりあったかくない。

「ちょっと祐巳ちゃん?なにがどうしたの?」
「いえ…」

わからない。
まったくの、謎。

あれ?聖さまの頬に少し赤みが……?

「飲まなきゃ冷めちゃうよ?」
「あ」

うつむき加減でパカン、と音を立てて缶を開けながら前髪の隙間から横目に祐巳を見て、コクリとコーヒーをひと口。
確かに、せっかくの暖かいスープが冷めてしまうのはもったいない。
とっさに膝の上に置いたコーンスープの缶を手に取り軽く振ってから缶を開けた。

ひと口飲んだら、ふんわりとした甘さと暖かさが広がる。
うわ…なんか、格別。
寒い時の暖かいものは幸せを感じてしまう。

……あ

そう思った時、数を数えるように云ってマリア様の前に置いてきた瞳子ちゃんの『寒さ』が頭をよぎった。
「百数え終わるまで動いちゃダメ」なんて云って、祐巳は瞳子ちゃんを置いて校門を出た。

そこで、聖さまから声を掛けられた。

きっと瞳子ちゃんはもうとっくに百は数え終えてるに違いない。
でもどうして祐巳は百数えて、なんて云ったんだろう……たとえ血が上った頭を冷やすのが…落ち着くことが目的とはいえ、ジッとその場で動かずにいたら寒いだろう。
両手に包んだコーンスープの暖かさに、ひとりで数を数える瞳子ちゃんの『寒さ』に胸が痛む。
そして、瞳子ちゃんだけじゃなく、祐巳自身の気持ちを落ち着かせるための数数えだったんだって、今更気付く。

一体、祐巳は何を云ったんだろう。
あんなに瞳子ちゃんを頑なにさせる何を。
柔和していたはずの瞳子ちゃんの心を再度凍りつかせる、何を。

まるで今の瞳子ちゃんは、幼いころに見た童話の女王…心を凍てつかせてしまった寂しい雪の女王のように感じた。
氷の鏡の欠片が刺さったカイよりも、カイを探し続けたゲルダより、……その誰よりも温もりが必要な、雪の女王……





「……冷めちゃうよ」

優しい声にいつの間にか俯いていた顔をあげると、空になった缶を手に弄ぶようにしながら聖さまが微笑んでいた。

祐巳に声をかけてくれて、一緒にいたお友達から離れて、以前一緒に初詣に来たあの神社の近くの小さな公園まで連れてきてくれて。
でもなにも訊かずに、ただそばにいてくれる。

もしかしたら、声は聞こえていなかったにしても、瞳子ちゃんと祐巳を見ていたんじゃないだろうか。
だから……ここに?


あの時、祥子さまとすれ違ってしまった祐巳を励ましてくれたのは、聖さまだった。
あの時、祐巳が解らなかった祥子さまのことを教えてくれたのも、聖さまだった。

それは、祐巳が祥子さまの妹だから。
蓉子さまの妹の祥子さまを見守っていたから…だからこそ知っていたことを、ほんの少し教えてくれていた。

あの時のように聖さまは祐巳のそばにいてくれている。
でも、聖さまは瞳子ちゃんの事は何も知らない。


「……聖さま」
「ん?」
「蓉子さまが、以前『妹は支え』と云っていたんです」

弄んでいたコーヒーの缶を両手で包むようにして、動きを止めた。

「聖さまにとっての志摩子さんも、そうですか?」

数秒間、祐巳の目をジッと見つめてから、聖さまはゆっくりと微笑んだ。
その笑顔が優しくて、なんとなく胸が痛くなる。

「そうだねぇ…あの子は私にとって鏡みたいなもんだったからねぇ…戒めに近かったかも。そりゃもちろんそれだけじゃないけどね?みんなひっくるめれば『支え』っていう言葉も当てはまるかもしれないけど」

おもむろに頭をポンポンと軽く叩かれる。

「……で?祐巳ちゃんは、電動ドリルちゃんに支えてもらいたいのかな?」





≪続≫

posted by 松島深冬 at 02:29| ☁| Comment(1) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おはようございます。
 ……松島さまのSSだー!! 嬉しくて朝からテンション上がりました。続きが楽しみです。
Posted by 広園鈴菜 at 2007年03月16日 07:49
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