2012年04月01日

Beyond the invisible

はやて×ブレードSSです
順と綾那で行かせて戴きますので、どうぞヨロシク。

このタイトル、物凄く大事で大好きな歌のタイトルです。
(このタイトルで別ジャンルの話を前にも描いた事あるんですけどね…知ってる人いたら泣く)

このタイトルで書くのは、真剣に大事に行く証拠。
しばしお付き合い下さいませ。


では、どうぞ。







 度の合っていない眼鏡越しの視線の先。
 微妙にズレているソレに、ほんの少しの焦燥を感じるようになったのは、一体いつからだっただろう。



「……っ!いい加減にしろ!このピンク脳がっ!」
「う、うおぉぉ……相変わらずのステキな身のこなし……さすがうちの嫁……」
「誰が嫁だ誰がぁぁぁっ!」

 廊下の端まで響いているだろう怒号に「今日も元気だな〜」なんてノンキに思いながら部屋のドアを開くと、ゲームのコントローラのコードでギリギリと締め上げられて、顔を真っ赤にしているはやてちゃんと目が合った。

「おお…じゅ、じゅんじゅん、ヘルプ……」
「わお、綾那ったら緊縛プレイにお目覚め!?」
「くだらん事云うなら次はアンタを縛り首にしてやるが……?」

 眼鏡のレンズがキラリと光った。おおコワ。

「まあまあ、そろそろ消灯時間だよ。離れがたいのは分かるけど、はやてちゃんを解放してあげなきゃねん」
「ああん!あやなってばそうだったらそうといってくれれば!だいじょーぶ!あたしはあやなといつも一緒!運命共同たぐほぁっ!」
「永遠の眠りにつきたくなければさっさと自分の部屋に帰れ!」

 コントローラーのコードを巧みに操ると、はやてちゃんの体を開いたままだったドアの向こうへと投げ飛ばす。
「アデュ〜あやな〜」という声と共に飛んで行くはやてちゃんに「また明日ねー」と手を振って、ドアを閉めて室内に目を向けると、いそいそとテレビの前に座る綾那の姿にガックリした。

「……で、ゲームかい」

 セ〜ガ〜♪というおなじみの起動音の後、軽快な音楽が聞こえてくる。

「バカクロがセーブしないでソフト抜こうとしたもんだから……ったく」

 結構進んでたのにやり直しだ、だの、コントローラーしっとりさせんな、だの、ぶちぶち云いながらも画面に釘付け。
 ……て、なんのかんの云いつつ、一緒にゲームするくらい仲は良いんだよね、この人。
 日頃やれバカだの邪魔だのウザいだの云ってる割に、はやてちゃんの事を受け入れているし、認めている。
 これでも一応、同室で友達なんてのもやってるもんだから、割といろいろ見えていたりする。
 染谷との一件なんかも心配だったし、これはこれでかなりの進歩だと思うし、良い事だ。

 なのに、それが少し面白くないなと感じている自分が居るのは、どうしてなんだろう?

「ところでさ、なんでまだ眼鏡してるわけ」
「は?なんだ、やぶからぼうに」
「んー、だってさ?一応氷室のお姉さまと朱炎雪との対決で一区切りつーかなんつーか、ついたワケじゃない」
「あ?ああ……」

 ちら、とこちらに目線を向けてから、またゲーム画面へと目を戻す。
 同室だって事で、かなり前からかけている眼鏡の度があっていない事には気付いていた。
 何かトラウマみたいなものがある事も、それの所為で染谷に傷を負わせてしまった事も。
 頂上決戦前の朱炎雪との立合いも、染谷の事だけじゃなく、それに関係していたという事も。

「もうこれは私の一部みたいなものだからな」
「それはそうだろうけど、度は合わせたらいいんじゃないかなと」
「問題ない」
「いやいや、問題あるから!間違いなく」

 実際、見分けがつかなくて未だに名前を覚えられてない人間も多数いるんだし。
 浅倉みずちとかなんて、いい加減可哀相なくらいじゃないか。

「アンタやクロや夕歩は分かるんだから、それでいい」

 あとゆかりと槙さんと……会長とかも分かるぞ?とかなんとか云ってる。
 ああ、そうだっけ。染谷は分かるだろーね。
 この天地に来る前からの付き合いだもんね。
 どうして度の合わない眼鏡をかけてるのかも、家の事情とかも、染谷はみんな知ってるんだし。
 眼鏡をかけない、そのまま真っ直ぐに染谷の事も、見ていた事もあるんだろーし!

「んな……っ!?」

 驚いたような綾那の声に、ハッとする。
 手に、固い感触。

「何する順!返せ!」
「え?」
「眼鏡!返せ!」

 半ば呆然と、自分の手の中のソレを見る。
 綾那の、眼鏡。
 無意識なのか癖なのか、片方の目を手で隠すようにして、空いているもう片方の手をこちらへ伸ばしてくる。
 急に外された所為で動揺しているのも手伝っているのか、片目を隠しているからなのか、遠近感が合わないようで伸ばしてきた手がするりと逸れた。
 いや、それだけじゃなく、私自身も綾那の手から眼鏡を持っている手を遠避けていた。

「この!」

 他愛の無いじゃれ合い。
 いつもならそうだっただろうはずのソレが、いつもと違うのは、どうしてなんだろう?

 夕歩。
 どうしよう、夕歩。
 このままだと、何かが変わっちゃうよ。

 眼鏡を取り返そうとこちらに伸びてくる手を掴んで。
 手を引かれて崩れるバランスにその体を支えて。
 信じられない出来事に、見開かれた目を見て、ほんの少しの優越感。
 いつもの、度の合っていない眼鏡越しの少しズレた目線とは違う。
 初めての距離。
 こんな至近距離で見た事のない瞳に映るのは、驚愕。
 それが困惑に変わる寸前、私は眼鏡を押し付けるように渡して部屋を出た。
 そして、そうした事で、自分の行動がもう冗談では済まされないという事を思い知る。
 冗談になんて、出来ない。


 綾那の手を引く寸前に、自分を平静にさせようとしたのか、思い起こそうとした夕歩の姿。
 だって、久我は静馬を陰日向守らなくてはならないと、父さんに聞かされていたから。
 私は、夕歩を守る為に生まれてきたんだから。

 けれど、夕歩の姿は現われなくて。
 体は、勝手に動いていて。

 片方の手には、眼鏡の感触。
 もう片方の手には、綾那の手首。
 唇には、柔らかな綾那の唇。

 ……そして、明日からどうしようという……後悔が残った。



 To be continued?

20120401
posted by 松島深冬 at 18:35| 北海道 ☔| Comment(0) | はやて×ブレードSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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