2011年12月27日

春近し、未だ知らぬ想い

お久し振りです。
そして予定より進みが悪くてやっぱり分けますスイマセン
まずは始りで蓉子さま。
次に聖さまか志摩子さんですかね。
では、つづきは来年に持ち越します。
そして今日でPC訓練はお休みに入ります〜
覚えた事を忘れない事を切に祈るよ……





「いいよ、私が残るよ」と緩やかに右手を挙げて聖が云った。
もしかするとそう云った聖の中では、もう何かが始まっていたのだろうか……?



-1-




そろそろ帰りましょうか、と提案して皆を見回すと、祐巳ちゃんがいつの間にか眠り込んでしまっていた。
ヴァレンタインの宝探しやら何やらで疲れていたのだろう……その光景は、皆の頬を緩ませる、微笑ましいものだった。
でも。

「……可哀想だけど、起こさなきゃね」

そう云った時、傍にいた令がそっと祐巳ちゃんの肩を揺する

「祐巳ちゃん、起きて。もう帰る時間だよ」
「……は、い……」

小さく身動ぎしたものの、直ぐに寝息が聞こえてくる。

「あらら。よく眠っちゃってるのね」

江利子が苦笑する。無理矢理起こすのも可哀想だけれど、まさかひとりにはしておけない。
今はまだ四時半とはいえ、あと三十分もしたら日も暮れてしまうだろう。
祥子の一喝があれば一発で目を覚ますのだろうけれど、残念ながら家の用で既に帰宅してしまっている。
「折角お姉さま方が久々にいらしてくれているのに……」と名残惜しそうに祥子は帰って行った。
家庭学習期間に入ってしまっている三年生は学校に来ていても、なかなか逢う事が無い。
なんだかんだと、卒業を間近にした三年は色々と忙しいものだから。

「誰か残れる人がいればいいんでしょうけれど……」

そう云いながら志摩子が腕時計を気にしている。
その時、聖が緩やかに右手を挙げた。

「いいよ、私が残るよ」

別に特に用も無いから、と微笑む。
そんな聖に江利子が珍しそうに云った。

「あら、珍しい。白薔薇さまがそんな事云い出すなんて。もしかして貴女、この期に及んで祐巳ちゃんに悪戯しようって云うんじゃないの?」
「うわ、失礼な」

聖が心外だ、というように腕を組む。

「こんなに気持ちよく寝てるのに起こすの可哀相だなって思ったのに……それに寝てて意識無いのに悪戯したって面白くないでしょ」

冗談なんだか本気なんだか分からない物言いをする聖に由乃ちゃんが反応する

「ロ、白薔薇さま!?セクハラですよ!」
「あれ〜由乃ちゃん?嫌だなあ本気にしちゃったの?冗談だってば」
「冗談に聞こえないのは普段の貴女の態度の所為でしょ。じゃあ、任せてもいいのね?白薔薇さま?」
「おっけーおっけー任せてちょー」

パタパタ手を振る聖に「それなら」というように江利子がさっさとコートを着込んでビスケットの扉を開くと「ごきげんよう」と出て行ってしまう。
それに令と由乃ちゃんも続くように「ごきげんよう」と「お先に失礼します」と出て行った。

「はいはい、ごきげんよー」

志摩子もコートを着て鞄を手にする。

「では、お姉さま」
「うん。ごきげんよう志摩子」
「はい」

穏やかに微笑みながら頭を下げて扉の向こうに消える。
それを目で追いつつ聖の名を呼ぶ。

「なに?蓉子」

振り返るように私を見る聖に、何故だろう……言葉を紡ぐ事が出来なくなってしまう。

「いいえ、なんでもないわ……ごきげんよう」
「ん、ごきげんよう」

いつものように軽く手を振る聖に笑い掛けて扉を閉めた。

ギシギシと軋む階段を降りて扉を開くとひんやりとした空気が頬に触れ、来月には3月だという事が信じられなくなる。
けれど、その3月には自分たち3年は卒業なのだ。
それなのに実感がまったく伴わない。
受験も終え、志望校に合格し、4月から通う大学ももう決まっているというのに、だ。
そんな自分に蓉子は自嘲的に笑うと、少し前を歩いている志摩子を見て、少し早足で追い掛けて声を掛けた。

「志摩子」
「紅薔薇さま」
「久し振りね、二人だけなんて」

そう云った私に志摩子はニッコリと微笑むと「本当ですね」と頷いた。
いつもなら聖や祥子、そして祐巳ちゃんも一緒なのだから、無理もない。
こんな風に志摩子と歩く事は久し振りどころか、ほとんど初めてに近いかもしれない。
だからなのだろうか……こんな事を聞いてみようなどと思ったのは。

「志摩子は祐巳ちゃんの事、どう思っているのかしら」
「祐巳さんの事……ですか?どうとは……?」
「いえ、深い意味はないのよ。ただ、聖を見ていたらなんとなく……ね」

違う。
私が聞きたいのはそうではない。
本当に聞きたい事ではなく、何故か唇からこぼれたのは祐巳ちゃんの名前だった。
志摩子はそんな私の内側を知ってか知らずか、ふっと表情を和らげた。

「きっと」
「え?」
「きっと、お姉さまと同じかもしれません」
「聖と、同じ?」
「はい」

どういう意味なのだろうか。
首を傾げる私に「すみません」と志摩子が笑う。

「うまく説明が出来ないんですが……ただ、そこに居てくれたらいい……そんな感じと云ったらいいのでしょうか」

足元に目を落としてから、そしてそっと後ろを振り返るようにして、前へと視線を戻す。
つられたように後ろを振り返ると、木々の隙間から小さく見える薔薇の館の明かり。
きっとまだ祐巳ちゃんは小さな寝息を立てていて、それを聖は微笑ましげに見つめているのかもしれない。
そう思いながら志摩子を見ると、思いがけずに静かな表情をしている事に気が付いた。

その表情が、何を思い、何を語っているのか……それに私が気付くのは、もう少し後の話。





……fin?


20111227
posted by 松島深冬 at 10:53| 北海道 ☔| Comment(2) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
祝!活動再開
お疲れ様です。
Posted by kio at 2011年12月30日 23:07
有難う御座いますkio兄さん!
だがしかし。
メイド様の方がまだ終わらぬのですよトホホーイ
今年もよろしくお願いしますです

Posted by 松島深冬 at 2012年01月10日 08:53
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