2006年03月14日

心の中の死角

前回のバレンタインネタを引きずってますがホワイトデーなんですよ?(笑)

すいません、終われなかったので続きます…
甘いの書きたいのにまた真面目です…何故?(聞くなよ)


では、ドウゾ。







「これは、一体どういうことですか?」

祐巳ちゃんの、笑顔が怖い。
私は苦笑いしながら天を仰いだ。





『約束なんて信用出来ないもの』

そう思っていた私が嬉々として約束を交わすようになったのはいつからだろう。
ホワイトデーは、空けておいてと云った祐巳ちゃんの言葉通りに三月十四日の予定は真っ白にして。
…まぁ予定なんて最初から無かったけれど。
それまでだって逢っていたけれど、でもなんとなくその日に逢うのが待ち遠しく思っていた。

そしてとうとう訪れた、十四日。
妙に早く目を覚まして今か今かと祐巳ちゃんが訪れるのを待っていた。

そう、待っていた。
周りが見えなくなってしまうほど。
部屋の一角にあるものが、見えなくなってしまうほど?



何故か祐巳ちゃんは部屋に訪れてからある一角を気にしていた。

「あの…聖さま?」

お茶の用意をしていた私に遠慮がちに聞いてくる祐巳ちゃんに「んー?」と振り返らずに返事を返す。

「あの、この箱…なんですが、ずっとここに置いてありますよね?」
「へ?箱?」

箱?
そんなもの、あったっけ?
首をかしげながら振り返る。
ちょうど私の立ち位置からはソファで死角になる位置で見えない。
マグカップに紅茶を注いで、ソレを手に祐巳ちゃんに近付く…につれてソレが姿を現した。

…あ。

意識的か、無意識か。
視界から消えていたソレが私の目に飛び込んできた。
見えない、というのが不思議なほどの大きさのその箱を私はやっと思い出した。

「…これ、おうちからですね…聖さま?」

しゃがみこんで、宛名と送り主を見て祐巳ちゃんが私の顔を見る。
封のガムテープすらそのまま。
何もかもが届いたままのソレに、祐巳ちゃんが訝しげな顔。

そりゃそうだ。
もう半月以上このまま置かれていたんだから。

「中身も確認せずに、このままここに置いておいたんですか?」
「…祐巳ちゃんだって、ずっとここにあったのに気付かなかったじゃない…」
「気付いてましたよ!ずっとここに有ったってさっき云いましたよ私!…て、解ってて置いておいたんじゃないんですか!?」

封も開けずに、このまま。

「これは、一体どういうことですか?」

祐巳ちゃんの、笑顔が怖い。
私は苦笑いしながら天を仰いだ。

「聖さま…ダメじゃないですか…おうちの人が送って下さったものなのに。緊急の御用とかあったらどうするんですか」

ごもっとも。
でもあの人たちのことだから急ぎの用ならこんなことはしないだろう。
それが解っているから私も放置していたんだろう。

しかし、せっかくの今日にこれを見つける祐巳ちゃんも祐巳ちゃんだ。
そして、さっさと片付けなかった私も私ってことなんだろうけれど。

ええい!

私はビビーッという音を立てながらガムテープをおもむろに剥がし始めた。

「せ、聖さま?」

驚いたように祐巳ちゃんが声を上げる。
今日は待ちに待った約束の日だってのに、いつまでもコレに時間を取られるのは耐えられない。
さっさと片付けましょう、さっさと!

そんな気持ちで箱を開けた。

………は?

「聖さま…これは」
「スプリングコート?」

入っていたのは、白いトレンチコート。
通りで宅急便で受け取ったとき、箱の大きさに比べて軽いはずだ。

「わぁ…素敵ですねぇ…」

祐巳ちゃんが目をきらきらさせている。
コートと一緒に入っている便せんにはたった一行。

『聖ちゃんに似合うと思って買ったので送ります。』

母親の字で書かれたそれを見て、何故か不思議な思いに駆られた。
正直、母親には口うるさいイメージしかなく、こんな風に短い手紙を入れるような人には思えなかった。
もし手紙を書こうものなら便せん二〜三枚くらいは書きそうな気がしていたから。

「さすが聖さまのお母さまですね、聖さまにお似合いですよ、きっと」
「…え」

さずが…って?
あの母親が?

はやくはやく、と急かす祐巳ちゃんに私はそのコートに袖を通す。
サイズもピッタリで、妙にしっくりとそのコートは私に馴染んだ。

「素敵ですよ!聖さま!よくお似合いです!」

祐巳ちゃんの何故か嬉しそうな顔に私は逆に困惑してしまう。
それこそ、数年前に誕生日にねだって約束をして買ってもらってコートからは親に衣類等は買ってもらったことなどなかった。
私には私の好みってものがあるから…そう云って一緒に連れ立って買い物に行くなんて事も無かったのに。

「…そんなに、似合う?」
「はい!」

なんの含みも無い、まっさらな笑顔で祐巳ちゃんが答える。

「素敵なお母さまですね、聖さまのお母さま」

信じられない思いで私は祐巳ちゃんを見ていた。
私にしてみれば、祐巳ちゃんの育った環境の方が素晴らしいと思うし、素敵だと思っているのに。

何をどうしたらいいのか、解らない。
何も云えない。
複雑で、混乱する。

だから…私は祐巳ちゃんを抱きしめた。



…続く(泣)

20060314
posted by 松島深冬 at 09:39| ☁| Comment(2) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わぉー!
もう書いて下さったんですね!
本当ありがとうございますm(__)m

私もあの段ボール忘れてましたよ…(苦笑
約束を交わした日ってのは何故かとても特別な感じがしますよね
それまで同じように逢ってたとしても…なにかその日はいつもと違う、そんな気がします
心の中の死角…聖さまの中にある見えなかった見なかった部分なのかもしれませんが、そこに自然と触れ、そして受け入れる事ができたのは、祐巳が傍にいてくれたから…なのかもしれませんね

続き楽しみにしてますねー
Posted by 涼森青真 at 2006年03月14日 12:54
段ボール。
結構忘れて下さっていた方が多かったみたいで、思わず『引っ張り出さなきゃよかったぜ…』と呟いたとか呟かなかったとか(笑)

そうですね。
約束ってある意味特別かもしれません。
Posted by 涼森青真さま:管理者松島 at 2006年04月05日 07:32
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