2009年09月11日

云われて初めて気がついた

お久しぶりでおじゃりまする。

すいません、ついにmixi始めてしまいまして…そちらの日記は書いてましたが、こちらお留守に(爆)


さて、マリみてSSでおじゃりまする。
いつも通り聖祐巳ベースにありまする。
久々に聖さまと志摩子さんです。
とある1日、みたいな。

では、ドオゾ






いつでも君のことばかり。





「ごきげんよう、お姉さま」

久々に聞いた『妹』の声に、なんの抵抗もなく振り返った。
その柔らかい笑顔に、相変わらずだな…なんて、思わずホッと息をつく。

「久し振りだね志摩子。元気だった?」
「はい。お姉さまもお元気そうですね」

ふんわりと笑みながら云う妹の、誰もいない『となり』を見ながら首を傾げる。

「形状記憶合金みたいに真っすぐでしっかり者の孫は?」

私の問いにキョトンとした顔をする志摩子に、判りにくい例え方だったかな?思った瞬間、彼女がふふっと笑った。

「お姉さまったら、乃梨子が聞いたら怒りますよ?」
「うーん、冗談通じなさそうだもんねぇ」
「真っすぐは確かにそうですけど、結構柔軟なんですよ?」
「そっか」

どこか誇らしげな、姉の表情の志摩子についつい顔がほころびそうになる。
一般的な姉妹とはかなり違った姉妹だったんだろうけれど、それでも妹のこんな表情を見ればやはり嬉しいし、微笑ましい。
高等部のころ、蓉子が祥子と祐巳ちゃんを通りすがりに見て微笑んでいたのを見たことがあるけれど、きっとこんな感覚だったのではないか…なんて、今更ながら思い返した。

「で?その乃梨子ちゃんはいずこ?」

久しぶりに並んで歩きながら聞くと、小首を傾げて私を見る。

「おば様には任せておけないことがあるからと先に帰りましたけど……なにかご用がありましたか?」
「いや……ただいないのかなって。ふむ、仏像関連のテレビ番組でもあるのかな」
「………ふふふ」

今の笑い、もしかしたらビンゴなのかね……面白いなぁ。
正直、私はあの市松人形みたいな孫をいたく気に入っていたりする。
頑固そうなところもあるけれど、確かに話を聞くことの出来る柔軟な『耳』を持っている。
そんなところが良い。
思わず見掛ければついついちょっかいをかけたくなるくらい気に入っている。
リリアンに通う仏像好きってのもまた。
いろいろと総合しても志摩子にお似合いだ。

「それにしても…この時間に会うなんて珍しいんじゃない?山百合会のほうは?」
「高等部内で風邪が流行してるようで……私と瞳子ちゃんだけでは出来る仕事も限られてしまうので」

志摩子と瞳子ちゃん以外?
そこに引っ掛かりを覚えた。

「祐巳さんはお家のご用で先に帰りました」
「え?」

あ、そうなんだ?
思わずホッとする私を、志摩子が見つめていることに気付く。

「な、なに?」
「お姉さま、祐巳さんに似てきましたね」

ちょっぴり困ったように笑みを浮かべる志摩子に、思わず溜め息をついてしまいそうになった。

さすがは私の妹。
やはり志摩子には適わない。

祐巳ちゃんのことを名指しで云ったのも、そういうことだ。
多分、相手が志摩子だからなんだろうけれど…『風邪』と『志摩子と瞳子ちゃんだけ』というキーワードで、祐巳ちゃんも風邪をひいたのかと心配になったことが顔に出てしまったのだろう。

彼女を百面相とからかっていた自分が、百面相しているということが気恥ずかしい。
まったく、やっかいなところが似てきてしまったものだ。

「じゃあ由乃ちゃんと……えっと、菜々ちゃんだっけ?その子が休んじゃってるワケ?」

照れ隠し半分、親友の孫と親友に似ているひ孫の心配半分で確認する。

「ええ…クラスでも風邪をひいている方が多くて」
「……ああ、そういえば大学の方でも風邪っぴきが多いかも。気温差が激しいからねぇ今年は」

暑くなったり涼しかったり、忙しいったらない。
そういえばテレビで今年は異常気象だとか云っていた。

「祐巳さんによれば、花寺でも流行ってるそうです。お姉さまも気をつけてくださいね?」
「私よりも自分の心配しなさいね。山百合会はこれからも忙しいんだから。風邪なんかに負けてらんないでしょ」

ポンポン、とよく祐巳ちゃんにやるように志摩子の頭に手を置くと、驚いたような表情の後…嬉しそうに「はい」と微笑んだ。

……そっか。
そういえばこういうスキンシップはあまりしなかった。
姉妹になったからって別段何かが変わったわけではなかったし、まもなく祐巳ちゃんが祥子の妹になって……あー、祐巳ちゃんをからかうことのほうが多かったかも。

でも、こんな志摩子の表情を見るとガラではないかもしれないけれど、あの短い時間の中でももう少し、姉らしいことを出来ればよかった……なんてことを考えてしまう。
けれど、それは今考えることであって。
あの頃の私たちには、あの距離が最適だったのだ。
人にはそれぞれに合った距離感というものがあると思うから。
近付き過ぎて毀れることがある。
けれど離れ過ぎてもダメなこともある。

誰との間にも、適度な距離感があるから。


……ダメだ。

こんなことを考えていたら、無性に祐巳ちゃんに会いたくなってきてしまった。
にっこり笑った顔が見たい。

祐巳ちゃんには、距離感を縮めてくれるチカラがあるから。
それは多分、私だけが感じていて、彼女はわかっていないだろう。
勝手に気持ちが沈んで作りかけた空気の壁を、自然に…まるで溶かすかのように…祐巳ちゃんは私の内側にすんなりと入ってきてくれる。
そういう気持ちの時は人の思いやりや気遣いがうるさく感じてしまいがちなのに、祐巳ちゃんにはそう感じたことはほとんど無い。
何度そんな祐巳ちゃんに気持ちが救われたか、わからないくらいだ。
もしかしたら、あの子のそんなところにみんなが救われているんじゃないだろうか。

…まぁ、私が一番恩恵に与っているのかもしれないけれど。


「……お姉さま」

志摩子が苦笑しながら私を呼んだ。

「百面相、してます」



……云われて気がついた。



20090911
posted by 松島深冬 at 21:41| ☁| Comment(0) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。