2009年06月29日

private opinion

はじめて物語でっす
BLACK LAGOONでっす
何故かレヴィさんとヨランダばあさんメインです(謎)
いいじゃないさ、ヨランダばあさん好きなんだから!
エダ出せなかったのが心残り…


ではどうぞ


暇をつぶす為にやってきた暴力教会に目当ての人間の姿は無い。

礼拝堂は閑散としていて『暴力教会』という通り名は似合わない雰囲気だ。
本来の名の『リップオフ・チャーチ』としての厳粛な空気に満ち満ちている。
見慣れている十字架に磔られたイエスやステンドグラスのマリアも、いつもの数倍神聖な雰囲気だ。

けれど、そんな空気を物ともせずにスゥ…と息を吸うと、レヴィは声を張り上げる。

「おーいエダー!返事しやがれ!この腐れ尼がぁ!」

クワン、と礼拝堂中に響く声に返事は一向に返ってこない。

「……チッ、いねぇのか?エダのヤツ」

レヴィはガシガシと頭を掻くと、もう一度舌打ちをしてつまらなげに溜め息をついた。

「しゃーねぇな…」

出直すか、と磔のイエスに背を向けようとした時、奥の扉が開いた。

「おや、レヴィ嬢ちゃんじゃあないか」
「……婆さん」

礼拝の準備にでも来たのか、ぶ厚い聖書を腕に抱えるようにして現れたシスター・ヨランダが柔らかな笑みを見せながら、いつもレヴィとエダが酒を酌み交わしながらトランプに興じている机にそれを置いた。

「エダなら使いに出ているよ。そうだねぇ…小一時間もすれば帰ってくるんじゃないかね」
「ふーん…」

邪魔したな、とヒラヒラと手をあげて扉に向かおうとしたレヴィに何の気まぐれか、ヨランダが「嬢ちゃん」と声を掛けた。

「なんだよ、仕事の依頼か?」
「いいや。まだ礼拝まで時間があるんでお茶でも煎れようかと思っていたんだけどね……どうだい?レヴィ嬢ちゃん、お茶一杯分、このヨランダのお相手をしてはくれないかい?」
「あぁ?」

「なんであたしが」とか「やなこった」とか、とにかく断る方向の言葉が口から飛び出そうとした。
けれど、レヴィはそれを思いとどまって、一瞬考えるようにした後で「付き合ってやる」と頷いた。
そんな彼女にヨランダも「おや?」というような表情をした後に、その笑みを深くする。

「それじゃあこちらにおいで。その内エダも帰ってくるだろうさ……と、リコ!レヴィ嬢ちゃんと奥にいるから、エダが戻ったら来るように云っておくれ」

ヨランダの声にバタバタと足音が近付いてきた。
ドアが開くとひょっこりとリカルドが顔を見せた。

「わかりましたシスター!」

レヴェッカさんごゆっくり!と云ってまたリカルドはバタバタとドアの向こうへ姿を消した。
「全く、落ち着きがない子だねぇ」とヨランダが目を細めた。






ヨランダの後ろをついて行きながら、レヴィはなんだか不思議な気分になっていた。
一体全体、自分はどうしたのだろうかと。
婆さんの与太話に付き合おうなんて酔狂だ。
いつもの自分なら有り得ないこと。

これは、全くのイレギュラーな出来事だ。


「昨日届いたばかりの茶葉さ。新しい缶を開けるときはワクワクするねぇ」

ヨランダが目を細めながら缶を開けた。
レヴィは……といえば、あまり行儀が良い座り方とは云えはしないものの、ソファに腰を下ろしヨランダの手元を見ている。

めんどくせぇこと、やってんなぁ……

ポットやカップを暖めて。
茶葉をスプーンで2つ3つ。
ポットに湯を入れて、それでやっと終わりかと思えば、ヨランダは砂時計の砂が落ちるのを眺めている。
そのヨランダの目がレヴィに向けられた。

「……厭きたかい?それとも痺れを切らしているのかい?レヴィ嬢ちゃんは相変わらずの短気なんだねぇ…」
「うるせぇ」
「少しはあの坊ちゃんを見習えと前にも云っただろう?」
「うるせぇっつってんだろ…ったく、そんなまどろっこしいことしなくても、開ければ即飲めるビールや酒のがよっぽど美味いんじゃねぇのか?」

そう悪態を吐きつつも、ソファから立たないレヴィにヨランダはただ「そうかい?」と笑う。

「嬢ちゃんの云う酒だって、ひと手間もふた手間も掛けて作っているだろう?ヘタをすりゃあ10年、20年もの時間をかける酒だってあるじゃあないか」

それと同じさ……そう云いながらポットを持ち、暖めておいた2つのカップに紅茶を注いでいくと、ふんわりと良い香りが鼻を掠める。

「さぁ、お待たせしたね」

2つのカップの一方をレヴィの前に置き、もう一方を自分の前に置くとヨランダは、カップを持ち上げてその香りを楽しむかのようにしてから、ひとくち口に含んだ。
目を細め、満足そうな表情をするヨランダに、レヴィもカップを手にする。
唇に近付けると確かに良い香りがする。
悪い気はしない。
そしてそっと口に含むと…

「……甘い」

思わず飛び出した言葉に、自分で驚いた。
マグカップにティーバッグを入れて熱湯を注いだだけの香りもへったくれもない、湯に色がついただけみたいなモノや、出過ぎて舌に渋味が残るようなモノとは違う。
正直、砂糖も入れてない紅茶を甘いなんて思ったのは初めてだった。

「おや、解るかい?レヴィ嬢ちゃんの舌は黄金の舌だねぇ」

ヨランダはレヴィの素直な反応に頷いて微笑む。

「焦らず、手間を惜しまなければ、その分雑味は出ずにまろやかになるのさ。私が紅茶に目がないのはもちろんだけど、紅茶を淹れるこのひと時も愛おしくてね」

優しい気持ちになれるのさ……とヨランダは呟いて紅茶を楽しむ。

「レヴィ嬢ちゃんの両脇のその銃…カトラスも同じじゃあないかい?手入れをしてやらなきゃあ、いざという時に嬢ちゃんを守ってはくれないだろうさ」
「一緒にゃならねーだろ、銃は」
「そうかい?銃だけじゃない、どんなものだってそうじゃないかねぇ?ほんの少し、優しい気持ちで接するだけでもいつもと違う感じになるんじゃあないかね」

優しい…気持ち、ねぇ…

鼻で笑うようにして、レヴィはカップを置く。

そんなもの、役になんか立ちゃしねぇ。
優しさだけで腹は膨れない。
ヘタすりゃこっちの命が危なくなる。
そんなものが通用する場所なんか、自分のそばには無かった。

だから、今こんな世界の果てにいるんだから。

「……なんだよ婆さん。『暴力教会』のアンタがそんなこと云うのかよ」
「私は腐ってもシスターだよ?嬢ちゃん。神に仕える身さ。愛の伝道師だよ」
「はっ!逃げ込んできた迷える仔羊の足元見て、金ふんだくろうなんてのが神の御遣いかよ!」

ソファから立ち上がったレヴィにヨランダが「お待ち」と小さな包みを寄越してきた。

「あ?なんだよコリャ」
「おすそ分けだよ。淹れ方は今見ていて覚えたんだろ?嬢ちゃんが淹れるのも良し、あの子に渡すのも良し。好きにおし」
「……ロックにか?ああ…まあアイツなら茶のひとつやふたつ淹れられそうだもんなぁ……」

包みの中が茶葉だということは、軽く振ったらすぐに判った。
以前、注文品の火器の受領のためにロックとここに訪れた時に、彼は紅茶に絡めて麻薬の闇取引の話を持ち出して無事ランチャーの納品に漕ぎ着けていた。
……その時、ロックは「ティーバッグ以外の紅茶は久しぶり」だと云っていた。
元々紅茶が好きじゃなければ……紅茶に明るくなければ出来ない切り返しだっただろう。

「おや?私はダッチ坊やのことを云ったんだけどねぇ?」
「へ?」

目を丸くするレヴィを、ヨランダが意味有り気な笑みを浮かべて見ている。
何かを見透かされているかのようなその視線に「チッ」と舌打ちする。

「ロック坊やに淹れておやりな。あの子なら、レヴィ嬢ちゃんが淹れたら素直に喜ぶんじゃないかい?」
「……ごめんだね。なんであたしがアイツにそんなことしてやらなきゃいけねぇんだ」

悪態に笑みを深め、ヨランダが何かを云おうとした時、扉をノックする音が響いた。

「リコかい?」
「シスター、ラグーン商会のロックさんが来てますけど」
「用件は?」
「レヴェッカさんをお…」

皆まで云わせぬ、というようにレヴィがドアを開いたせいで、リカルドの言葉がそこで切れる。

「お茶、ごっそーさん」
「あれ?レヴェッカさん?姐さんを待っていたんじゃないんですか?」
「なんだリコ、まだエダを『姐さん』呼ばわりしてんのか?気をつけねぇと、そのうちデコの真ん中一発食らって風通し良くなっちまうぞ?」

げっ!と小さく呟いて額に両手をあてるリカルドをカラカラ笑いながらその横を通り過ぎるレヴィにヨランダが声を掛けた。

「嬢ちゃん、またお茶を飲みにおいで」
「ごめんだね」

肩をすくめながら云うレヴィにヨランダが大袈裟に溜め息をつく。

「なんだいなんだい、お茶の淹れ方が判ったら用無しかい?現金な子だねぇ」
「は?何云ってんだ、婆さん」

礼拝堂へのドアを開きながらレヴィが振り返ると、彼女はニッと少し人の悪い笑みを浮かべている。

「わからないとでもお思いかい?ロック坊やにお茶を淹れてやろうと思ったから、私の誘いに乗ったんだろうさ」
「な…っ」
「このヨランダの目は誤魔化すなんて出来やしないよ?お嬢ちゃん?」

飄々としたヨランダの表情と、お見通しだと云わんばかりの言葉に反応して目をつり上げる。
そんなふたりのそばでリカルドが天を仰いで十字を切った。

「ば…っ!何云って…っ!」
「レヴィ?」

両脇のホルダーで、今か今かと待っているカトラスの出番がついに訪れたかと云うそのとき、レヴィの向こう側から声がした。

「やあ、ロック坊ちゃん」
「こんにちは、シスター・ヨランダ。レヴィ、なにをそんなに怒ってるんだ?」
「お前にゃ関係無ぇ!」

ロックを振り返って怒声を響かせるレヴィを物ともせず、ロックはヨランダを見る。

「ロック坊や、嬢ちゃんは怒ってるんじゃなく照れているのさ」
「照れてる?何故?」
「いい加減にしやがれババァ!」

ガシッ!とロックの腕をとると、グイグイと力任せに出口へ向かう。

「チクショウめ!」
「お、おいレヴィ??」

訳がわからず引き摺られていくロックに、シスター・ヨランダがニコニコと手を振る。
それに空いている方の手でパタパタ振り返すロックに「何ちんたらしてやがる!さっさときやがれ!」というレヴィの怒号と共に扉が閉まった。

「やれやれだねぇ」

やっぱりレヴィ嬢ちゃんはもう少し、短気を治さなきゃいけないねぇ……そんな独り言をシスター・ヨランダは溜め息混じりに、けれど、どこか楽しげに呟いた。


fin


20090629
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posted by 松島深冬 at 02:13| 🌁| Comment(2) | BLACK LAGOON SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こちらにもお邪魔してしまいました。全て理解した上でレヴィをつつくヨランダ、最高です!原作の雰囲気はそのままなのに甘めのSSを拝見する事が出来て幸せです♪
そしてレヴィはこの後こっそり紅茶を入れる練習をするんでしょうね。むふv
Posted by さき at 2010年02月11日 02:06
・さきさま

わっ、お読み下さり有難う御座います!
嬉しい〜!
ヨランダさん、ロアナプラの何から何まで知ってるのではないでしょうかね?
あのダッチを坊や呼ばわりですし(笑)

レヴィさんは練習しますね…もう絶対(笑)
Posted by 松島深冬 at 2010年02月12日 11:07
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