2009年06月29日

Lovesickness

リハビリテーションSS、やっとup
あまりの遅筆に涙涙

時間軸は祐巳ちゃん3年生です
紅薔薇さまです
聖祐巳が軸なので、そこんとこヨロシク

ではどうぞ






……カーテンの隙間から、まだ太陽の光は射し込んで来てはいない。
でも空の色がうっすらと白んできている。
枕の上の方に手を伸ばして、手探りで目覚ましを鷲掴みに取る。
ブルーのライトが浮き上がらせる時刻は、まだ4時を過ぎたばかり。
起き出すには早い時刻。
祐巳は枕の上に手を伸ばして目覚ましを元の場所付近に置くと、また目を閉じた。

眠らなきゃ。
眠らなきゃ。

……でも、どうしても眠れない。
眠りに落ちることが出来ないままで、起床時間はやってくる。

もう祐巳は今日で4日、こんな朝を迎えていた。






「どうかした?祐巳さん」
「ご飯はもっと明るく食べなきゃ」

消化に悪いわよ?と由乃さんが半分になっていたウインナを口の中に放り込む。
お昼休みの薔薇の館でお弁当を食べてるのは3人だけ。
妹たちは用があるらしく、今日は来ていない。
だからぼんやりな祐巳にツッコミを入れてくるのは実質的には由乃さんだけだ。
それにしても、消化に悪いはともかく……なんとなく食欲が無い気がする。
でも、お腹が空いていないワケは無いし放課後には今はいない妹たちも揃って、山百合会の仕事もあるんだから、無理しない程度には食べておこうとお弁当を開いていた。
薔薇さまになったばかりなのに、以前みたいに体調を崩してみんなに心配を掛けないためにも。

でも…

「…そんなに暗い顔してご飯食べてる?私」
「別に目に見えて暗い顔はしてないよ、前みたいには百面相しなくなったし。でも、ねぇ?」
「ええ。元気が無いとか、一緒にいれば判るものよ?」

里芋をぱく、と志摩子さんが口に入れる。

「親友ってそんなモノでしょ」
「祐巳さんだって、私や由乃さんが元気無かったら解ってしまうでしょう?それと同じよ」
「…なるほど」

くすぐったいというか、なんというか、なんとも云えない気持ちで頷く。
解りやすい例えです、ハイ。
こんな風に気にかけて貰える親友って有難いなぁ、なんて思いながら祐巳はミートボールを口に運んだ。

「で?」
「で?って…なに?由乃さん」
「祐巳さんがそんな風にご飯を食べてる理由よ」

指を差す代わりにフォークの先を祐巳に向ける由乃さんに「お行儀悪いわよ?」と志摩子さんが諌める。

「別に何ってことは無いんだけど……ただ最近朝早く目が覚めちゃうくらいかなぁ」
「目覚めが早いって、祐巳さんが早寝なんじゃないの?」
「そんなこともないと思うんだけど」
「ゆうべは何時?」
「0時くらいだったかな」
「目が覚める時間は?」
「今日は4時過ぎかな」

由乃さんがあんぐりと口を開けて祐巳を見ている。
口の中に何も入ってなくて良かった。
いくら親友でも咀嚼中の食べ物は見たくないし。

「4時間くらい……」
「志摩子さん?」
「それは何日くらい続いているの?」

志摩子さんが眉を寄せながら訊いてくる。

「今日で4日……かな」
「ちょっと祐巳さん、そりゃ元気もなくなるよ」
「そうね……」
「……」

祐巳はちょっとうつむいて、クリームコロッケを半分にする。
眠らない、のではなく眠れない。
いくら目を閉じて眠ろうにも目が冴えてしまう。

「瞳子ちゃんに妹が出来たワケじゃないのに、おばあちゃんになるのはまだ早いわよ?祐巳さん」
「へ?」
「ホラ、年をとっておばあちゃんになると朝早く起きるって云うじゃない」
「由乃さんねぇ」

まだそんな年じゃないってば。
すると、いきなりビシィッ!と音がしそうなくらい、今度はフォークではなく指を刺されてしまって祐巳は、思わず口に入れたばかりのクリームコロッケをほとんど噛めずにゴクンと飲み込んでしまった。

「ど、どどどうしたの由乃さん?」
「由乃さん、人を指差してはいけないわよ?」

志摩子さんがお茶を啜りながら諌めた。

「祐巳さん、それは恋患いだわ!」

ヤケに熱くオーバーアクションな由乃さんに、志摩子さんが少し小首を傾げて「由乃さん……もしかして新しい捕物小説でも読んだのかしら?」と、呟いた。
なるほど、だから名(?)探偵由乃になっているのか。
しかし「新しい恋愛物読んだ?」ではなく「捕物読んだ?」と訊かれてしまうのはリリアンでは由乃さんくらいかもしれない。

「な、何云ってるのよ志摩子さん…って、祐巳さんもなんでそんな納得してるのよっ」
「でも、読んだのでしょう?」
「…うう」

にっこり笑った志摩子さんにトドメを刺されて由乃さん、お手上げ状態。
やっぱり読んでたんだなぁ。

「それはさておき」

志摩子さんがお茶をテーブルに置いて、由乃さんに向き直る。

「由乃さんは何故そう思ったの?」

急に真面目に訊かれてしどろもどろしてしまう由乃さん。
志摩子さんって普段はふわふわとしてやわらかい雰囲気なんだけど、どうしてか時折有無を云わせないみたいな感じになるときがあるんだよね。
…もしやこれが『薔薇さまの威厳』ってヤツ?
祐巳や由乃さんより一年先に白薔薇さまをやっているんだし。
それをナシにしても確実に祐巳よりは威厳がありそうだ。

ていうか、恋患い…って…

「えっと……令ちゃんが読んでたコスモス文庫にあったのよね。あの人のことを考えるだけでご飯も喉を通らない、眠れない…とかなんとか」
「とかなんとか?」
「なんかそこら中かゆくなってきちゃったから読むのやめちゃったのよ」

うわあ、由乃さんらしいなぁ。
うーん、捕物や剣客物を読む由乃さんなら恋愛少女小説はちょっと甘過ぎかもしれないか……なんて、祐巳のことを心配してくれてるのに他人事みたいに考えていると、志摩子さんがジッとこちらを見ていて。
思わず「余計なこと考えてました、ごめんなさい」と謝らなきゃいけない気持ちになりつつ「な、 何?志摩子さん?」と声を掛けた。

「……祐巳さんのプライベイトな部分だから詳しくは聞かないけれど……もしかして、お姉さまが原因?」

うっわ、直球勝負だ。
ズバンとキャッチャーミットにストライク。

「……あら。ビンゴみたいよ、志摩子さん」

由乃さんがまじまじと祐巳を見て、うんうんと頷いている。

「どどど……」
「祐巳さん、そりゃあ前よりは表情に出ないけど、不意をつかれるようなこと云われると、まだまだ百面相だよ?ついでに云えば、どもってるよ今」

……それは相変わらずの百面相ってことじゃない、由乃さん……
はぁ、と思わず祐巳は溜め息をついてしまう。
そんな祐巳に「まぁまぁ」と由乃さんが慰めるようにポンポンと軽く肩を叩いた。

……確かに、聖さまの顔を見られていない。
最上級生、薔薇さまになって新入生を迎えて、去年も体験しているはずなのにやっぱりなかなか大変で忙しくて。
タイミングも良くないのか、聖さまとばったり帰り道で逢う、なんてこともなくて。
電話で声を聞いちゃうと、お顔が見たくなって。
でも夢にも聖さまは出てきて下さらなくて。
それに……

「ということで、志摩子さん」
「ええ、由乃さん」

ニッコリ。

うつむき掛けていた顔をあげると、それしか形容しようがないくらいの笑顔が祐巳に向けられていた。

「今日の放課後、祐巳さんは聖さまを探し出してお会いすること!それが祐巳さんのミッションよ!」
「山百合会のお仕事なら心配いらないから、平気よ?」

え、ええーっ!?

あれよあれよと云うように、由乃さんと志摩子さんによって、祐巳の放課後の予定が組み上げられてしまった。

お昼休みも、もうそろそろおしまい。
パパッとお弁当箱やらお茶やらを片付けた2人が「教室に戻るわよー」と祐巳を待っている。

ちょ、ちょっと待って!?
祐巳を置いて先に進んじゃわないでーっ!



……see you later?


20090629
posted by 松島深冬 at 01:55| 🌁| Comment(2) | マリア様がみてる SS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。松島様のSSだーっ! 続き、楽しみに待ってます。
Posted by 広園鈴菜 at 2009年06月29日 14:32
広園さま
こちらではお久し振りです!
久々過ぎでリハビリ状態ですが(苦笑)
Posted by 管理人・松島 at 2009年07月01日 14:43
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